東京は「自由」だった

26歳で愛知県から東京へ出た。

地方から上京するというのは、かなりのエネルギーがいるもので、一旗あげてやる!という気持ちもあった。一旗あげるなんて、どストレートな気迫は小っ恥ずかしさもあった。

東京は怖いところだと思っていたが、住めば都。当時のわたしには、田舎より都会の方が楽な部分もあった。東京の人たちは隣近所に誰が住んでいるか皆興味も無さそうだったし、わたしから見ると不思議な格好して歩いている人もたくさんいたが、誰も見向きもしていなかった。田舎なら、その日のうちに喫茶店でウワサになったに違いない。

本連載から生まれた青木さんの著書『母』

誰も、わたしに注目していないというのが、「自由」で、わたしは堂々とパジャマのような格好でコンビニに出かけお菓子と漫画を買って、壊れそうなベランダに出てタバコを吸って、堂々とパチンコや雀荘に行けた。誰の目も気にすることなく何だってした。楽しかった!

故郷に錦を飾りたいでしょう?と聞かれたこともあったが、元々自信がないからか、私が錦を飾るって分際じゃないだろうと、テレビに出てもそんな気持ちには全くならなかったし、地元に帰っても、別に歓迎されているような気はしなかった。