組の未来を託された私たちが、全力で歌って踊る。そうしなければ新しい組として認めてもらえないのではないか、なんとかしなければ、と無我夢中で。たまたま主演というポジションにいる私だけでなく、和央さんと湖月さん、そして組のみんなが「とにかくお客様に認めてもらうしかない!」という気迫でやっていた。
今回のコンサートでは、ハードなダンスを再現――とまではいかないですが(笑)、歌への向き合い方を通して、当時の心持ちを今一度お伝えできればと思っています。
これは以前からお話ししていますが、宙組トップの辞令は何度もお断りしていました。なぜなら私が2番手として活動したのは半年あまり、月組での真琴つばささんのトップお披露目公演期間の半分にすぎません。
2番手としての経験を十分に積めたとは言いがたい状況でした。戦ったことがない、武器を使ったこともない人が「武器を渡すから戦場に行ってくれ」といきなり言われるようなものです。
それでも宙組のトップになってからは、「とにかく実力をつけて舞台に立つしかない」と、ひたすら稽古に励んでいました。公演中も、開演前や終演後に稽古、稽古。さらに宙組の宣伝のために取材が毎日入っていましたから、飛ぶように日々が過ぎていきました。
もう一つ、《原点》といえば、これも私のお披露目公演の芝居『エクスカリバー』の劇中歌に「未来へ」という曲があります。2020年7月、コロナ禍に入って宝塚の公演が軒並み中止になってしまった時、宝塚の生徒(団員)たちが大劇場から歌をお届けする動画配信の試みがありました。その時の曲が「未来へ」。「いま歌いたい曲は?」と生徒全員にアンケートをとったところ選ばれたそうです。
先が見えない状況のなか、お客様に伝えたい曲が「未来へ」だった、そのことがとても誇らしくて。私にとっての大切な曲を、今の生徒の皆さんも歌いたいと思ってくれた。そんな歌に育ったと思うと、当時の私たちの必死な日々には、意味があったのだなと感じられます。