先ほど「仕事へのスタンスは変わらない」と言いましたが、3年にわたるコロナ禍の影響で、舞台芸術を取り巻く状況のほうが変わってしまいました。何年も前から準備してきたライブが開催されなくなるというのは、結構こたえます。

舞台やライブがなくなって、裏方のスタッフさんたちが生活できなくなったというニュースが話題になりましたが、それは私たちアーティストも同じ。会社員ではないので、(舞台の)本番がなくなれば収入もなくなります。

コロナ禍に入ってすぐの頃は、8ヵ月以上も本番がなくて。15歳で宝塚音楽学校に入学してから、これほど長い間歌わなかったことがない私は、いろいろと考え込んでしまいました。

宝塚に在団中、阪神・淡路大震災に遭っていますが、その時だって公演再開までに半年もかかりませんでした。だから「演りたくてもその場所がない」という状況は、コロナ禍に直面した時が初めてだったのです。「違う仕事を探したほうがいいんだろうか」と思ったこともあります。

写真提供◎オフィスウオーカー

結局じっとしていることができずに、所属事務所に毎日のように通って、過去のライブ音源をまとめたり、映像の制作をしたりしていました。テンションを少しでも落とさないようにしなければと、なるべくスタッフに会って話すようにしていましたね。

今は少しずつ公演も増え、並行してインターネットによる配信なども多くなってきました。でも個人的な想いとしては、生の舞台を観てほしい。私自身、舞台やコンサートに足を運ぶと、「やっぱり劇場で観てよかった!」と思います。中学生の頃、「必ず宝塚に入る」と思ったのも、自分の目で舞台を観て、感動したからですし。

私たちは舞台上では楽しそうに笑っているのが仕事ですが、現実は、決して笑っていられない状況が続いています。お客様に足を運んでいただくには、まずは「観たい」と思わせる魅力的な舞台を作ること。

そして配信だけでいいわと思っていたお客様にも、「やっぱり劇場で観てよかった!」と感じていただくこと。そんな舞台を作らなければいけないと痛感しているところです。