「恐ろしい状況」に自分自身がいる
住居費のやっかいなところは、削りたくても削れない、という点です。食費ならば、外食をやめるとか、業務スーパーを活用するとか、(わずかではあっても)削ることが可能です。美容院や服などのおしゃれ代も、コンサートや映画、本などの教養・娯楽費も、我慢すれば減らせます。ところが、家ばかりは、おいそれとは削れません。金額が大きいうえに、削るためには引っ越しが必須です。
しかも引っ越すにもお金が要ります。引っ越し代だけでなく、賃貸で住み替えるなら敷金礼金などで家賃の約4~5カ月分がかかります。購入するとなると、もっとまとまったお金が必要になります。ローンが組めたとしても頭金のほか、物件価格の約1割の諸費用も用意しなくてはいけません。でも、日々の生活費に汲々としていると、「先立つもの」を用意できず、引っ越しできず、家賃の負担を減らせない、という負のスパイラルに陥ってしまいます。
そのうえ、賃貸物件では高齢者差別があります。これまで、「女性」の単身者というだけで、保証人問題などで賃貸契約のたびに嫌な思いをしてきた人も多いのではないでしょうか。非正規の場合はなおさらです。さらに60歳を超えると、大家が「孤独死リスク」を恐れるため、「高齢者」という壁が立ち塞がると言われます。
――という八方塞がりの「恐ろしい状況」に自分自身がいる、ということに、私は最近になって、はたと気付きました。
もともと、私は、賃貸派でした。生涯ずっと、自分が住むのは賃貸が良いと思っていました。住み替えがしやすいからです。引っ越し魔の「住み道楽」で、新築物件を渡り歩いて来ました。社会人になってからの引っ越しはなんと12回。うち1回を除いて、ずっと賃貸でした。ほとんどが新築でしたから、その都度、最新の住宅設備の恩恵に浴しました(おかげで貯金が貯まりませんでしたが、苦笑)。
温水便座も浴室乾燥機もIHコンロも当たり前。かつては新築だとホルムアルデヒドが酷かったものですが、最近は未入居物件でも喉や目が痛くなりません。我が身で、日本の住宅性能のすごい進化を体感してきました。そして、部屋が古びて来たら、または飽きたら、次の部屋に引っ越すのです。煩わしいご近所付き合いもなく、ずっと新しく快適な家に住めます。