自分で何とかしなくてはいけない

頭をよぎるのは、2020年11月に東京・幡ヶ谷のバス停で殺された女性の事件です。彼女は当時64歳、いまの私と大して変わらない年齢です。地方から上京し、単身で働き、直近は派遣などで販売員をしていました。ところが不安定な仕事のせいもあってアパートを追われ、コロナで職を失い、路上で暮らすようになったそうです。

それでも生活保護は申請せず、自力で何とかしようとしていたらしいです。彼女の事例は、不安定な立場の高齢女性が家を失うことの恐ろしさを象徴しています。無職・独身の女の末路を突きつけられたようで、とても他人事とは思えず、ショックでした。

とにかく家だけは確保しなくては。老後に、家を失って路頭に迷うことだけは避けたいです。ことに私は「フリー」の身。会社が守ってくれる会社員とは違います。年金で暮らす場合と事情は同じです。それに夫も子もいません。自分で何とかしなくてはいけないのです。

そして、はっと気付きました。いま私が悩んでいる老後の住宅問題は、同世代の単身女性たちが、遠くない未来、必ず直面する課題ではないでしょうか。1986年施行の男女雇用機会均等法の第一世代として、「初めての××」を切り開いてきた女性たちは、これから、初めての「大量定年」時代を迎えます。途中で会社を辞めた女性もいましたが、会社に残って頑張ってきた女性たちも少なくありません。結婚したり子供をもうけたりした人だけでなく、単身者もいるでしょう。

統計上は、独身の人に、私のようなバツイチを足すと、全国で50代後半の27.7%、前半でも29.9%がシングルです(2020年国勢調査から)。彼女たちは、会社を辞めた後の人生、特に住まいについてどう考えているのでしょう。国の統計によると、持ち家率は全国平均で63%ですが、50代の単身世帯の持ち家率はずっと低いです。50代女性の単身世帯では、東京都内では43%が持ち家ですが、全国平均では18%しかいません 。