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日本中で「民族大移動」が起きる時期 賃貸物件を借りる時のルール 帯に短し、たすきに長し
住むことは人生そのものだ

住むことは人生そのものだ

住むことは人生そのものだと、改めて思います。いまの自分が何を大事に思っているかが、住まい選びには出ます。予算の中で、何を優先したいか、です。広さか、家賃の安さか、駅からの近さか、日照か、静かさか、防犯面での安心感か、それとも……。その優先度は、人によって違うでしょうし、同じ一人の人であっても、人生のどのステージかによっても変わってくるでしょう。

例えば、会社勤めだった時は、私にとって家は寝に帰るだけの場所でしたから、日照や眺望がなくても、目の前に建物があっても、なんら構いませんでした。むしろ、朝は日が差さない部屋のほうが、不規則な睡眠時間を邪魔されなくていいと思っていたほどでした。なので、会社員時代から住んでいる今の部屋は、当時の通勤に便利なように、都会のど真ん中にあります。

夜、お芝居やコンサートから帰る時は近くて便利ですが、ゆえに住環境としては残念なことになっています。ベランダの前には隣のオフィスビル。南向きなのに、日が差さないどころか、こっちの室内は向かいのオフィスワーカーから丸見えです。だから日中もカーテンは閉めっぱなし。南向きの恩恵には、まったく浴せていません!

でもいまや、私には通勤がありません。朝から在宅で調べ物をしたり原稿を書いたりするなら、窓を開けて、カーテンも開けて、お日様にあたりたいです。ですから、いま、私が最も欲しているのは、南向き(または東南、南西向き)のお日様と、隣のビルから見られる心配のない眺望なのです。いっそ、いま探している駅徒歩10分圏内よりも遠く、バス便の物件を探した方が良いのかも知れません。

写真提供◎photoAC

とはいえ、仕事で、夜の舞台やコンサートを観に行くこともあります。終演後に劇場を出て、帰りの交通手段がない、では困ります。他県の劇場を9時半過ぎに出ても、終バスに間に合うでしょうか。間に合ったとして、終バスだと乗降客が少なくて、マンションまでの夜道が恐いんじゃないでしょうか。これらは、実際に、夜、行って確かめないといけません(しかも、「恐い」の感覚は人それぞれなので、自分で体験しないと。他の人が見て大丈夫と言っても、意味がありません)。

というわけで、私は、値段と図面、インターネットの資料写真だけで部屋を決める気にはなれないのです。値段には理由があるのですから。その部屋がその金額になっている事情は、許せるか、妥協できるかは、自分で見てみないと。内見もせず、現地に夜に行きもせずに決めてしまうのは恐すぎます。これから歳をとるほど、経済的にも、年齢的にも、転居がしにくくなるのですから。環境や室内を確かめて、納得してからでないと、お金を払って契約はできません。

かくして、さくさく契約を決めてしまいたいと思っている繁忙期の不動産業者にとっては、きっと私は迷惑な客でしょう。あれも見たい、これも見たいと、内見ばかりしておいて、ちっとも納得せず、いつまでたっても部屋を決めないのですから。

ところで、そもそもの疑問。「民間不動産で、アラ還独身女子は賃貸を借りられるのか、借りられるとして、いつまで借りられるのか」問題のほうですが。
どうなっているかといえば……。については次回に詳しく綴ります。

※次回は「民間賃貸で大丈夫?(下)~75歳まで大丈夫とプロが太鼓判、ただし賃貸市場はコロナ後、供給減で薄商い」をお届けします。

◆本連載が書籍化され3月8日に発売されました