大人になってもそれは変わらない。会社の同僚が誰かの悪口を言うたびに、まるで自分のことを言われているかのようにビクビクしていた。当時付き合っていた彼に太っていることを何度も指摘され、摂食障害に陥ったことも。結局、他人の目ばかりを気にして、20代の若い日々をほぼノイローゼ状態で過ごしてしまった。

その後、結婚して家庭を築いたものの、生きれば生きるほど、若いときには思いもよらない問題が次々と起こるものだ。

40歳のころ、父が末期がんであることを知らされた。介護のために実家へ駆けつけたところ、衝撃的な事実が判明する。父が経営する会社はすでに借金で倒産寸前、家は抵当に入っていた。親戚は「一家心中でもして責任を取れ!」と罵声を浴びせる。父も死ぬに死ねなかっただろう。結局、会社も家もなくした。

涙にくれる間もなく、今度は夫が突然「俺よりも実家のほうが大事なんだろ!」と言って出て行った。夫が起業するという大事な時期に介護で離ればなれになったことが、夫婦の溝を広げたのだ。

他人の言葉に何度も心をえぐられ、「もう無理です」と身体が悲鳴を上げていた。

 

 

飲み会には誘われないけれど

しかし、介護という仕事との出会いが、私の人生観に大きな影響を与えるようになった。この仕事に興味を持ったきっかけは、父の担当だった介護福祉士さんの存在。彼女が懸命に世話をする姿を見て憧れた。一念発起して、ホームヘルパーの資格を取り、今の職に。

そして8年、この仕事を通して、15人の入所者を看取ることになる。穏やかな人もいたし、思い出したくもない嫌な人もいた。一人一人とふれあいお別れをすることで、次第に自分自身に変化が生まれてきたのだ。

結局、人はひとり。家族がどんなにそばにいて手を握っていてくれても、ひとりきりで死んでいくことに変わりはない。だからもう、他人の一言には振り回されなくてもいいのではないか。自分を大事にすることに時間を使うべきでは。