「人の目を見て話を聞きなさい!」
「私の言うことが聞けないのか!」
と周囲は言うが、もう十分聞いてきた。そして聞いた結果、悩み苦しみ、幸せになれなかったのだ。いつまでも人の悪口を言ったり、他人をせせら笑ったりする人の話は聞かなくていい。自分に必要のない言葉は聞く必要がない。愚かな話に傷つくことなかれ。
そして、徐々に手に入れた「聞かない力」。日々、そのすばらしさに感動している。
人の話を聞かないのだから、もちろん友達は少ないし、飲み会にも誘われない。でもそれはそれで、何も問題はないのだ。どうでもいいことばかり電話してくる友達はいらないし、家でひとり飲んだほうが、お酒はずっと味も濃い。さあ、誰かに言われた一言や、冷たい視線やバカにされたような笑いは、あたたかいお風呂につかって、きれいさっぱり忘れてしまおう。
私は、人生のほとんどを悩んだり、泣いたり傷つくことに費やしてきた人間だ。でも、その悲惨な経験がなければ「聞かない力」を見つけることはできなかっただろう。
目はかすむし、若いときにはなかったシワやたるみを発見する。確かに鏡にうつる「私」は老けた。しかし、その代わりにこの力が得られたのだから、年を取ることも悪くないかもしれない。