「私を含めた女性の主審と3人の副審の計6人は元から顔見知りですし、今回も開幕前から2週間近く、みんなで和気あいあいと過ごしていました」(撮影:宮崎貢司)

私たち審判が見ているのは主にファール、つまり反則です。選手の位置や動きを総合して、オフサイドも見極めます。選手が手を使って相手を止めたら「X番がファール」、悪質な場合は「今のはイエローカード」とか、人の誰かしらが何か言っていることが多いですね。

ひとつひとつのファールの判定には、審判同士のコミュニケーションがものすごく大事です。私はフィールドの外、両チームのベンチの間にずっと立っています。主審や副審からは見えにくい位置で起こる事象について、「A番の選手はボールがないところで危険な接触をした。注意して」などと伝えています。

今回のW杯ではだいたい中2日で6試合、第4審を務めました。もちろん主審として選ばれたので、試合で笛を吹くことは大きな目標でした。そうではあっても、女性3人の中でフランス人のステファニー・フラパールさんが主審として試合に出たときは、とても興奮しました。

私を含めた女性の主審と3人の副審の計6人は元から顔見知りですし、今回も開幕前から2週間近く、みんなで和気あいあいと過ごしていました。ですので、試合を終えた彼女がホテルに帰ってくるところを待ち構えていた私は、「ステファニー、すっごくよかったよ! おめでとう」って、ぎゅっとハグしました。彼女も、やりきったいい顔をしていましたね。

基本的に審判はサッカーの試合中、選手並みに動く必要があります。それも、長い距離を走る持久力、短い距離をダッシュするスプリント力、自在に加速・減速・方向転換できるアジリティ(敏しょう性)など、さまざまな運動能力が要求されるのです。今回のW杯期間中も、ほかの国際大会と同様、審判のトレーニングが毎日組まれていました。

まず座学で、ファールなどの基準が統一されていることを確認し、その後はフィールド上で実際のレフェリング技術を磨いたり、練習グラウンドで体を動かしたり。さらに、カタールリーグのプロチームが実際に試合を組んでくれて、私も主審を務めました。

すべてのトレーニングメニューが本当によく練られていて、試合に向けてちゃんとコンディションが整うようになっているんです。私は試合中にあまり動かなかったので、メニューに加えてホテル内のジムでもトレーニングしていました。