JリーグJ1(FC東京対京都サンガF.C.)で初の女性主審を務めた山下さん(22年9月18日)(写真提供:アフロスポーツ)

世界中から集まるトップ選手とともに

――ところで、私は人からよく「感情が揺らがない」「クールだね」と言われます。先輩のレフェリングを見ていると、あえて厳しく感情を出すやり方ができれば、人やボールが目まぐるしく動く最中でも、選手にメッセージが伝わりやすいなあ、と羨ましくなることもあるんです。とはいえ、長い間に培ったものはおいそれとは変更できません。「冷静沈着なレフェリングが私の強み」と言っておくことにします。(笑)

でもときには、自分が笛を吹いた試合はあまり見返したくない、サッカーのことを忘れたい、という日もあります。そんなとき、最近私の中でブームなのが「街歩きの謎解き」です。指定された場所に友だちと出かけては問題を解いて、次の場所に移る。これが楽しいんです。

ひとりのときは漢字のパズルをひたすら解くのにもハマっています。難しい問題を解くことで、しばしの間、サッカー以外のことで頭の中を満たすようにしているんです。

今年の7月から、FIFA女子W杯オーストラリア&ニュージーランド大会が始まります。私も主審として、先輩の女性副審2人とともに参加が決まりました。カタールでは日本人の審判は私だけでしたが、今度は慣れ親しんだトリオでピッチに立てるかもしれないと思うと、ものすごくワクワクします。

かつてひたすらボールを追いかけていたサッカー少女だった私にとって、日本代表は夢のまた夢でした。世界中から集まった女子のトップ選手たちと一緒にオセアニアのフィールドを駆け回り、サッカーの楽しさ、素晴らしさを伝えることが、今から楽しみです。