似合わなくなった服は潔く人に譲る

思いがけず始めた《持たない暮らし》ですが、とても快適です。家の中は見通しも風通しもよく、空間のゆとりは気持ちのゆとりにもつながるみたい。クローゼットには手持ちのアイテムが並んでいて、一目で何があるかわかります。数が少ないので衣替えの必要もありません。

洋服は、白、黒、紺、ベージュなどのベーシックカラーがほとんど。流行にはこだわらず、できるだけ質のいいものを買って何年も着続けます。ブランドは、自分の好みで3つか4つに固定。色、ブランド、テイストがしっかり統一できていれば、どの服を合わせてもおかしなコーディネートにはなりませんし、鏡の前であれこれ悩む必要がなくなります。

お気に入りの服が傷んだら、同じものを買い直すことが多いです。たとえば、コムデギャルソンの白のTシャツ。質がよく、10年着ているものもあります。ヘビロテしている黒のパンツはエンフォルドのストレート。3年ほど穿いていますが、この形が今は廃盤になっているそうで、困っているところです。

ベーシックなアイテムが多いので、メガネやショールなどの小物をアクセントに使って楽しんでいます。色合わせはワントーンでまとめることが多いですね。これは失敗がないので、おすすめのテクニックです。

色には若い頃からこだわりがあって、たとえばグレーと言っても、好きなグレーと苦手なグレーがある。お気に入りの色味のトップスを1枚持っておくと、おしゃれがグンと楽しくなります。ネイルの赤も、オレンジ寄りの赤ではなくボルドーが好み。自分の手がきれいに見える色を知っておくと楽ですよ。

年を重ねると、少し前に着ていたものが似合わない、ということもたびたび。あれこれ工夫してもピンとこなければ、潔く甥のお嫁さんや姪に譲ってしまいます。いつも喜んでくれるので、人の役に立てた気分。(笑)

ちなみに白髪は、闘病以降いっさい染めていません。体にできるだけ負担をかけないように、という理由からでしたが、全身黒のコーディネートでも暗くなりすぎないのでけっこう気に入っているんです。

服だけでなく食器も最低限で、一人分だけ揃えています。食器棚からすべて出して並べ、自分が好きで日々使うものだけを厳選しました。客用食器はゼロ。不便はないですよ。だって、お客さんは家に呼ばないと決めましたから(笑)。どうしてもというときは、一緒に外へ食べに行けばいいのです。

面白いなと思うのは、洋服でも何でも、自分のなかでの譲れない軸を決めたら、生活や持ち物が自然とシンプルになっていったこと。大事なものだけが手元にあるという潔さ、わかりやすさが、心地よさにつながっているのかもしれません。