「駆体(スケルトン)」と「内装(インフィル)」

X社の場合、進行中の都内のプロジェクトで、たまたま再募集の住戸がありました。私が聞きに行ったのは、この再募集住戸についてでした。コロナでプロジェクトの進捗が遅れ、キャンセルが出た、けれど、すでに工事は始まっている、とのことです。

「ということは、もう住民同士の話し合いも随分進んでいる、ってことですよね? もうコミュニティーが出来上がっちゃってるとしたら、今からだと、入りにくいんじゃないですか?」心配する私に、S社長は、心配する必要はないと説明しました。

「コミュニティーといっても、そこまで濃くないですよ。あまり話し合いが多すぎると重たくなるじゃないですか。コミュニティーを作ろうとしている訳じゃなくて、建物を作っていく中で、こんな人がいる、というふうに、お互いに参加者の顔が見えてくる、お互いに見知っていく、という感じですから」

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実際のところ、マンションは運命共同体です。普通の分譲マンションでも、購入後は住民(区分所有者)が全員参加して管理組合を結成し、組合として意志決定をしなくてはいけません。というのも、建物の駆体など共有部分は、全員で維持補修をしなくてはいけないからです。

ここで、簡単に分譲マンションの権利について説明しましょう。建物には「駆体(スケルトン)」と「内装(インフィル)」があるのをご存じでしょうか。分譲マンションを買って「区分所有者」になったことがある人はご存じでしょう。「駆体」は、管理組合で、所有者みなで話し合って決める共有部分。

「内装」はそれぞれの住戸内、個別に手を加えていい占有部分です。集合住宅などの大規模建築の場合、梁、柱、床など建物そのものを支える構造物が駆体です。これは所有者全員が共同で管理するもので、誰かが勝手に手を加えたり変えたりすることはできません。

一方で区分所有している自分の住戸内は、壁や天井、窓の内側から、専有部分です。間取りの変更も、配管や配線の取り替えも、その部屋の所有者が勝手に出来ます。ただし、管理組合の細則で、リフォームの事前届け出は義務づけられているでしょう。また、フローリング禁止などと規則で定められている場合は、守らなければいけません。それでも、ルールさえ守れば、室内は所有者が勝手に変えられます。

マンションでは、外壁や屋上、ベランダ、窓や玄関ドア、廊下、エレベーターや非常階段、給排水管の縦管(本管)なども共有部分です。例えば、隣の公園から飛んできた野球のボールで窓が破られたとしても、管理組合の議決を経ずに勝手に修理することは出来ません(現実的には、管理組合に届け出ると、組合の理事会が、総会を待たずに緊急避難的に補修をし、後に管理組合総会で全体の了承を得る、という手順になります)。駆体は、補修をしないと劣化します。なので、長期修繕計画を立てて、適切な時期に修理や交換することが必要であることは、以前にこの連載で書きました。