コミュニティー

ですが、いかに修繕計画があっても、その通りに進まないのが世の常です。管理組合は、補修を計画通りに実施するだけでなく、長期計画を見直したり、突発的な事故に対応したりもしなくてはいけません。そして、かつて分譲マンションを買ったことがある私は、管理組合の運営の大変さと苦労は身に染みていました。どんな人がメンバーなのかによっても、運営のしやすさは変わってきます。

比較的、似た世帯が住むマンションならばまとまりやすいでしょうが、マンションによってはいろいろな世帯が混在します。タワマンのように上層階と下層階で購入金額に大きく差があると、金銭感覚や経済的な余裕が違う世帯が入ることになります。

ファミリータイプとワンルームが混在するマンションでは、実住と投資家とで建物の維持補修への考え方が違ってもおかしくありません。そういう場合、管理組合の運営で(特に金銭的な負担の場面で)揉めがちです。

年齢や年収、職業、家族構成といった購入者の属性は、新築時にマンションを分譲したデベロッパーだけが知っています。区分所有で購入した同士は、お互いどんな人が買っているのか、蓋を開けてみないと分かりません。そんな中、入居後に突然、管理組合の運営が始まります。区分所有者の中に、管理組合の運営に非協力的な人がいても、お金にルーズな人がいても、後の祭り。そのメンバーでやっていくしかないのです。

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その点、コーポラティブハウスは、建物が建つまでの間に住民同士で話し合うので、コミュニティー形成の意味では安心だと、私は思っています。プロジェクトの早い段階から参加者=居住者の顔が分かります。どんな人が住むのか、お隣さんや上下の世帯も顔見知りになり、人間関係も出来ていきます。

入居後に初顔合わせとなる普通のマンションより、入居前から顔見知りになっているコーポラティブハウスのほうが、管理組合は運営しやすいでしょう。しかも、コーポラティブハウスの多くは、数戸から十数戸と、コミュニティーを作りやすい規模感です。でも、だからこそ、コミュニティーが出来上がっちゃってたら、後から入りづらいなと心配したのです。S社長から、それほどガチガチの共同体ではないと言われて、少し安心しました。

もう一つ、コーポラティブハウスならではの懸念がありました。将来、普通の分譲マンションと同様に、売ったり貸したり出来るのか、です。これも、S社長は爽やかに、全然大丈夫、と請け合いました。「以前は、コーポラだと売れないっていう悪評を立てられたこともありましたけど、そんなことないですよ。むしろ普通のマンションより資産価値は下がりません。個性的なマンションですから、建築好きな人が買ってくれます」。