1年中酒造りが可能に

菊の司酒造の山田貴和子さんが案内してくれた新工場は清潔で、化学工場のような機能的なつくりになっている。「全量瓶内冷蔵貯蔵」では、もろみの上槽(絞り)のあとは即瓶に詰め、酸化や温度変化による劣化を最小限に抑えている。一般的に行われている「活性炭素による濾過」を行なわず、もろみの管理を徹底することで 「無濾過原酒」を作り出すことにも成功。米の吸水もストップウオッチで0.1%までコントロールしている徹底ぶり。

温度管理された麹室

製造工程が完全に温度管理されているため、1年中酒造りが可能となった。醸造、瓶詰め、出荷までが効率的に一方通行で完結するように整えられ、以前は人力で行っていた蒸米の移動も、クレーンを使うなどしてより安全にスピーディに行え、人にも優しい。

クレーンで運ばれる蒸米(撮影◎延 秀隆)

 

2015年に地上12階、地下1階の巨大な工場を建設、徹底したIT化でそれまでの3倍以上の生産量にし、アメリカにも進出した「獺祭」の旭酒造には杜氏がいない。〈1年中酒が造ることができ、工場で機械管理している〉と聞くと、「杜氏が昔ながらの手法で作ってこそ」と考える日本酒ファンも多いだろうが、「菊の司」の新工場は「機械化」と「杜氏の力」のハイブリッドだ。