地元を応援するために契約栽培も

たとえば、蒸し上がりをクレーンで運ばれた米は、蔵人が手作業で混ぜ合わせ、手と目で米の状態を把握しながら布に広げていく。今までは他県まで出荷するほどの量が生産できず、県内で消費されていた「菊の司」の日本酒が、これからは全国で味わえるようになるという。また、寒造りだった醸造が年間通しで行えることで、杜氏は通年で働けるうえ、「トライするチャンスが多いぶん、商品開発として思い切ったチャレンジもできる。新しいお酒を考え始めたら止まらない」と、杜氏の西館誠之さんは笑う。

人の目と手で厳しいチェックを(撮影◎延 秀隆)

また、工場の裏には田んぼが広がっていた。菊の司で使われている米は、そのほとんどが県内産。うち8割が「吟ぎんが」「ぎんおとめ」「結の香」という岩手県を代表する酒造好適米だ。「ぎんおとめ」は自社の田んぼで収穫しており、自社米を使用した新商品の開発も進めるとともに、地元を応援するために契約栽培の取り組みも行っている。

「ぎんおとめ」は自社の田んぼで収穫している(写真提供◎菊の司酒造)

工場のそばには、できたばかりの日本酒が買える店舗が併設されていた。国内外で受賞した数々のアワードも壁に飾られている。「蔵が変わってもお酒は変わっていない」という証明にも、今後も鑑評会での賞を目指したい、と山田さんは意気込みを語る。

数々のアワードが飾られた店舗