上手に付き合う

「チャットGPTは、質問を理解しているわけではなく、あくまでも単語と単語を確率的につないでいるだけだ。それが、あたかも答えてくれているように見える」=佐藤氏

「ただ、とても丁寧に作られている。人を差別したり、誹謗中傷したりする答えを出さないよう慎重に学習させている。最初の段階で、ここまでできるのはすごい」=松尾氏

飯塚チャットGPTの作る文章は日本語でも、人間の書いた文章となかなか区別はできません。そのすごいところは、すでに出回っている情報をかき集めて、素早く整理して、人間に提示してくれることです。逆に言えば、過去の情報を教えてくれるだけなので、そこから未来に向けて何かを創造するのはまだ人間の領分である、ということは忘れてはならないでしょう。これまでにない新しい視点を示すことができるのか。そこが人間と対話型AIの境界線になると思います。

チャットGPTは米国のベンチャー企業が開発しました。対話型のAIはこれまでも作られてきましたが、ヒトラーを礼賛するような答えを出したりして、問題を起こしてきました。チャットGPTは、こうした教訓を踏まえて、社会的にセンシティブな問題に対しては慎重に答えるよう作られています。こうしたことも、これだけ瞬く間に広まった背景にはあります。

「愛している」「自由になりたい」AI暴走?©️日本テレビ

吉田チャットGPTの出す答えには間違いも見られます。学習を重ねることで精度を上げるとは思いますが、回答の真偽は人間がチェックしなければなりません。怠ると、偽情報やデマの発信源になりかねません。対話型のAIと上手に付き合うためにも、私たちはリテラシーを高めていく必要があります。私は大学で教えることがありますが、学生にリポートを課しても、チャットGPTには代行できる力がありそうです。米国では、学校現場でチャットGPTの利用を禁止する動きが出ています。学生の理解度を測ることができないためです。日本も文部科学省や大学が対応に乗り出しました。

「チャットGPT」実は間違いだらけ?©️日本テレビ

もちろん、新しい技術を生かすことで、仕事は効率的になるでしょう。マニュアル化できる仕事、例えば「よくある質問」が多いコールセンターの対応などは、チャットGPTが得意とするところではないでしょうか。これまでの蓄積の上に成り立っている、例えば法律のような専門的な分野でも、チャットGPTを生かしていくことはできるかもしれません。人間の知的な作業とは何なのか。人間の仕事とは何なのか。色々と考えさせられます。