自分のルーツを知りたい

帰りの車でウトウト眠るのは心地よかった。家に着いて起こされるのは怠かった。しばらく車の中で寝ていたような気がする。

とれたアサリは、台所でプラスチックの桶に移し替えて、水をはり、潮抜きをした。しばらくは毎日アサリの味噌汁だった。大人になり、スーパーでアサリって高級なんだな!と知って初めて、ありがたかったのだなと知った。昔からそれを知っていたら、さらに美味しかったのではないかと、思う。
(無理矢理思い出したにしては立派な思い出!)

本連載から生まれた青木さんの著書『母』

両親がこの世に居なくなってから、自分のルーツを知りたいと思うようになってきた。

父は富山県利賀村(とがむら)の出身で、「死んだら利賀村に地蔵をたててほしい」という遺言だったが、利賀村は山深い場所にあり、建てたところで誰もお参りに行けない、と家族で話し合い、申し訳ないが尾張旭の墓に入ってもらった。だが、父がそこまでこだわった地元、利賀村に年々わたしも興味を持ち始めた。

利賀村は、演劇と曼荼羅の村だとも言われる。富山県の南西部に位置し、岐阜県に接する。標高1,000mを越える山々に囲まれた村域は南北に細長く、庄川の支流である利賀川、神通川の支流である百瀬川が横断。県内で唯一、未だアクセスが困難だ、とも言われている。