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日本各地の名産が手軽に味わえる缶詰が注目されています。缶詰博士・黒川勇人さんのおすすめは?(構成◎上田恵子 撮影 〈商品〉◎本社・奥西義和)

ブームの裏にたゆまぬ企業努力が

缶詰といえば、災害用備蓄品だと思っていませんか? いま缶詰の世界は百花繚乱。食材も味付けも、実にバラエティに富んでいるのです。

背景には、ここ10年ほどの缶詰ブームがあります。缶詰が注目され始めたのは2011年、東日本大震災がきっかけでした。関東圏でも計画停電が行われたことから、常備食として買い求める人が増え、その結果、多くの人が「缶詰って美味しい」と気づいたんです。時を同じくして、高級路線のおつまみ缶詰シリーズや、タイカレー缶詰が人気を集めたこともブームに拍車をかけた。18年にはサバ缶ブームもありましたね。

もうひとつ大きいのが、企業側の努力です。たとえばパッケージ。最近は思わず買いたくなる魅力的なデザインが増えてきました。さらに、鮮度を保つことが難しいことから産地だけで消費されていた豊かな食材や、缶詰にするのが難しかった食材の製品化に成功した例がたくさんあります。

パッケージと中身の両方が洗練されてきたことにより、スーパーだけでなく、オシャレなセレクトショップでも扱われるようになりました。付加価値をつけることで商品単価が上がり、缶詰作りに携わる職人さんが誇りを持って仕事に打ち込めるようになったという声も耳にします。町おこしに一役買っている商品も少なくありません。僕自身、地方の生産者を応援する気持ちで選んでいます。

「ちょうどいい量である」ところもおすすめできる点。世の孤食化を受けて缶詰も小さくなり、一人でも食べきれるサイズのものが増えています。たとえば、野菜の煮物とハンバーグの缶詰に、ご飯さえ用意すれば立派な食事になるでしょう。調理の手間が省け、洗い物も減らせて楽ですね。

ちなみに、缶詰は常温で美味しく食べられるように作られています。料理は温度が低いと塩味を強く感じることから、塩分控えめになっているのも中高年には嬉しいポイントです。

日本には、生産者の思いがこもった美味しい缶詰がたくさんあります。次ページから私のおすすめ商品をご紹介しますので、ぜひ味わってみてください。