賃貸と購入の中間的な「いいとこ取り」
例えば、3000万円の新築マンションや新築戸建てで、担保評価額も3000万円と計算してもらえた場合、融資限度額が50%だったならば、1500万円をローンで借り、1500万円は手持ち資金で用意することになります。同機構によると、新築マンション購入で借りる1500万円を、リ・バース60ならば、変動金利3.0%で、月々約3.8万円の返済で済みます。
同じ1500万円を、普通の住宅ローンで返すとなると、元金も返すため、金利が1.0%と低かったとしても、月々約6.9万円の返済になる(返済期間20年)、との試算です。リ・バース60を活用すれば、ふつうの住宅ローンの半額ほど、月々わずか3.8万円の支払いで、死ぬまでずっと、そのマンションに住み続けられる、というのです。住居費が浮く分、年金や貯蓄は、生活費や他の支出に回すことが出来ます。
もちろん、普通の住宅ローンであればいずれ返済は終わり、そのときには物件は購入者の所有物になりますが、リ・バース60だと自分のモノにはなりません。頭金は入れたものの、どれだけ長期間利息を払い続けても、元金は借りたままだからです。それでも、月々の支払いが賃貸並みに安く抑えられるうえ、賃貸物件ならば常につきまとう「追い出される不安」がないことを思えば、賃貸と購入の中間的な「いいとこ取り」と言えるでしょう。精神的には、よほど豊かで安定して過ごせそうです。
注意事項としては、物件の担保価値が十分ある物件しか融資の対象にならない、ということです。新築マンションならばいいですが、中古物件を買う場合は担保評価額が下がります。リ・バース60を使う場合に必要な自己資金は、物件価格の半分どころか、もっと多くなります。
中古一戸建ての場合、上物の価値はどんどんゼロに近くなり、土地の価値だけになりますから、担保価値だけを考えれば、上物は新しく建てるか大幅リフォームをするほうが、ローンをつけられやすいでしょう(環境にやさしくとか、持続可能な開発目標<SDGs>とかいった考え方には逆行しますけれど)。
また、そもそも、首都圏では、新築で3000万円などという安さのマンションはあまり現実的じゃありません。もう少し予算を増やさないと物件はありませんが、予算が上がれば、当然、注ぎ込む自己資金も増やさなくてはいけません。その意味で、そもそも手持ち資産のある人しか使えない制度ではあります。
でも、ずっと社宅暮らしだったとか資産運用をしていたとか、または相続した実家の土地建物があるとかで、手持ち資産があり、かつ、普通の銀行ローンが難しい年齢や属性の人の場合は、リ・バース60という手がある、と覚えておいても良いのではないでしょうか。ことに後期高齢者になった後、サ高住に入居したいと思った時には、リ・バース60は強力な助っ人になってくれそうです。
閑話休題。O社桜新町センターでのS氏との面談に話を戻しましょう。このリ・バース60の仕組みが使えないのかどうかを、最後に私は尋ねました。今回、私が内見したいと言った物件は、「新築一戸建て」です。借地権でもありません。この購入に「リ・バース60」が使えるのではないか、フラット35など普通の住宅ローンとリ・バース60とでは融資の条件が違うのではないかと、S氏に聞いてみました。