「釣り物件」
ちなみに。その後、性懲りもなく物件情報を検索していて、私はとある可能性に気付いてしまいました。最初に「申し込みが入っちゃって」とO社から内見を断られた一戸建てが、1カ月が経った現在もまだ、売れ残っていることを発見したのです。価格は同じまま、別の業者によって販売中でした。O社のサイトや情報では、物件の住所を明かしていませんでしたが、他の条件が同じです。
同一物件とみて間違いないでしょう。また、O社で内見させてもらえなかった都内のほうの物件も、いまだ販売中です。こちらはO社以外の複数の業者が媒介業者として情報を出しており、どうやらなかなか売れずに苦戦しているようです。うむ? もしかしたら、O社にとってこれらは、いわゆる「釣り物件」だったのでしょうか?
「釣り物件」とは、顧客になりそうな人を「釣り上げる」ためにネットに載せる、お買い得物件のことです。ネットで検索して「釣り物件」にヒットし、連絡してきた顧客を、業者は「申し込みが入った」などと言い訳をして、他の(本当に売りたいほうの)、もっと高かったり条件が悪かったりする物件に誘導します。賃貸業者では「釣り物件」による顧客の囲い込みが横行し、中には架空の物件をでっちあげて「おとり広告」にしていた悪徳業者もあり、問題視されました。ですが、まさか戸建ての売買で、しかも、テレビCMもやっているような業者が、そんな手法で顧客を釣っているかも、だなんて?!
とはいえ、O社の場合、「釣り物件」は架空ではなく、物件自体は実在します。まだ募集もしていますから、宅建業法等に違反する「おとり広告」とは違います。「申し込みが入った」という理由や他の事情で、募集しておいて内見させてくれなかった、というだけですから、違法とまでは言えません。
それに、「他で申し込みが入った」という理由が虚偽だったかどうかも、確かめようがありません。もしかしたら本当に、いったんその時点で申し込みが入ったのに、後日、(ほぼあり得ませんが、申込金を放棄してまで)キャンセルした、または売買契約が不成立に終わった、という可能性もないとは言えません。
法的にはグレーゾーンです。でもおそらく、O社は、はなから、「釣り物件」そのものを売るつもりも、内見させる気も、さらさらなかったのだろうと推測します。内見の準備をした形跡もありませんでしたし。4000万円台の「釣り物件」をネットに掲載していたのは、一戸建ては無理だと思ってマンション購入を検討中の30~40代の顧客候補を、一戸建ても「手が届くかも」と思わせて呼び込むのが目的だったのでしょう。
そして毎回、アポの日の朝になると内見を断り、懐事情で選別して、他の物件を紹介する、またはお引き取り願う、というのが常道なのではないかしらん。違う支店で同じ手法で、私が何度もたらい回しにされたことを考え合わせると、会社ぐるみの「上客」獲得マニュアルがあるように思われます。