地獄の沙汰も金次第

ところがS氏は、きょとんとしたまま。「そんなの聞いたことがないです」。そもそもリバースモーゲージやリ・バース60自体をよく知らないようです。(なんてこった!! あんなに、とくとくと、いかに私に購入資格がないか、戸建てじゃなくてマンションにしたほうが良いか、って説教を垂れていた相手が、私より全然、不動産の知識がないなんて!! きっとS氏は、マニュアル通りの30~40代サラリーマンへの売り方と不動産知識しかないのでしょう)

S氏は、「先輩に聞いてきます」と言って、いったん事務所に引っ込みました。しばらくして戻って来ましたが、「先輩も、取り扱ったことはないそうです」。そして「リバースモーゲージは、購入時に全額支払わないといけないそうです」と、のたまいます。ああ、それは普通のリバースモーゲージ、またはリースバックという金融商品(不動産を担保に生活資金を借りるローン)です。ローンとして借りる「リ・バース60」を知らないのですね。なんと不勉強な!!

語るに落ちたな、と思いました。つまり彼らは、はなから50代以上なんて顧客と思っていないのでしょう。S氏も先輩も含め、O社では、リ・バース60を使わなくても売れる人だけを対象にしてるってことです。よーく分かりました。はあ、そうですか、じゃあ帰ります、と、ようやく私は席を立ちました。S氏のほっとした顔が忘れられません。ようやく帰るよ、買えない物件を内見したいなんて図々しいヤツだ、と思っていたかもしれません。

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「すみませんでした、お時間とらせて。でもフラット35を使える物件を探さないといけないってことが分かって、良かったです」と最後に言うと、「こちらこそ、ご案内できない物件を紹介してしまってすみません」。暗に、私には一戸建ては「分不相応だ」、って言っちゃってます。失礼な! すみませんでしたね、買えないくせに連絡してきて。

営業所を出てから振り向いたら、S氏は見送ってもいませんでした。すっごいピーカンの天気だったのに。たいていの不動産仲介業者は、雨の中ですら、客が次の辻を曲がるまでは見送っているものです(丁寧すぎる、過剰だと、見送られるこっちの気が引けるくらいに)。はいはい、顧客じゃないから、お見送りも適当なんですね。了解しました。二度とO社の物件は見るまい、どうせ買わせてもらえないんだから、と、私は思いました。

ああ~! それにしても腹が立つ!! こんなにバカにされるなんて! 買い物に行って、お店にこんなに酷い扱いを受けたのは、いったいいつ以来でしょう? まあ、しょうがないんですけれどね。これが資本主義。地獄の沙汰も金次第。冷やかし(じゃなかったんですが)の客は客じゃない。いかに効率よく、ローンのつきやすい若い客をひっかけるかが、O社の商売なのでしょう。