フラット35

「ローンのご相談ですよね」と言って、S氏が説明を始めました。いわく、一戸建てを買うのに、私のような「アラ還、独身、フリーランス」の場合、住宅ローンは全期間固定金利の「フラット35」しか使えない、とのことでした。「自営業の方だと、フラット35で組むしかないんですよねえ。フラット35は、ローンが組みづらい人が組めるように、っていうのが主なので」と、S氏が説明してくれます。フラット35だと、2023年3月時点で、金利は1.96%。民間銀行の変動金利に比べるとかなり高金利です(それでも、不動産担保ローンなど他のローンよりは安いですが)。

フラット35は、要件として、(1)戸建てなら床面積70平米以上、(2)年間返済比率は35%以下、(3)申込時70歳未満、80歳完済、(4)再建不可物件は不可、(5)建物は新耐震、などを満たさないといけません。お気づきでしょうが、もうこの時点でアウトです。都内の4780万円の物件は、土地35平米、建物40平米しかありません。(1)の床面積で、そもそも対象外なのです。フラット35が借りられないなら、他の住宅ローンが借りられない私には、この物件は買えませんね、以上終わり、ちゃんちゃん、なのでした。すいませんねえ、フラット35しか借りられない身で、と肩身が狭くなります。

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そうか、だからこんなに塩対応でたらい回しされているのか、と、ようやく私は合点がいきました。私の属性は彼らには「お呼びでない」のです。O社がターゲットとしているのは、属性の良い若者なのでしょう。はっきりホームページに書いてくれたらいいのに。「45歳以下の会社員・公務員しか扱いません」って。O社の狭小住宅は、床面積70平米未満の一戸建ても少なくありません。

それらは、属性の良い顧客――ローンが借りやすい公務員か会社員で、できれば既婚者で、35年ローンが借りられる45歳以下の人――であれば、民間の銀行で住宅ローンが借りられます。簡単に売れます。住宅ローンが借りやすい、そうした高属性の人だけをターゲットに商売をしたいのでしょう。そのほうが、マニュアル通り、ばんばん作って売れるからです。だからテレビCMでも、若いタレントを起用しているんでしょう。

ショックを受けながらも、せっかく話を聞きにきたのだからと、私はS氏に食いさがりました。もし、私が会社員だったら、大丈夫でしたか? S氏は答えました。「はい、会社員だったら、同じ年収なら、普通の銀行ローンが借りられたでしょうから、この物件は買えます」。

単身者でも?「単身者でも買えます。会社員なら、単身者でもローンがつくでしょう」。女性の単身者で、御社で狭小一戸建てを買う人って、いるんですか? 「いらっしゃいます。30代の独身女性で、買われた方がいます。でも、1LDKの狭い物件じゃなくて、将来、結婚したり家族が増えたりして住み替えをする時に売りやすいように、もう少し大きめの物件を購入するようにお勧めしましたけれど」。ああ、そうなのですね。フリーランスは辛いよ、ってことなんですね。年齢差別よりも単身者差別よりも女性差別よりも、会社員じゃない、という属性差別が最大に響くんですね。ということが、よーく分かりました。残念。