シニアと呼ばれる年齢に差しかかり、それまで歩んできた道のりを振り返ってみると、こんなはずじゃなかったのに、という思いがこみ上げてきます。樺田冬子さん(仮名)は、引きこもりの夫、息子2人を抱え一人で奮闘してきましたが……(「読者体験手記」より)

古く狭い団地の3DKに引きこもる3人

7回も転職を繰り返した挙げ句、50代半ばで勝手に会社を退職した夫は、以来、10年にわたり無職を続けている。長年暮らすなかで、夫は発達障がいではないかと私は思っている。

毎日、万年床でゴロゴロしながら、一日中スマホをいじったり、パソコンを触ったり。その間もテレビはつけっぱなしにして、BGMがわりにしている。干すと怒るのでめったに干すことがない布団は、よれよれになり臭う。シーツも勝手に洗うと機嫌が悪いので放ってある状態だ。

人との交流は望まず、週に1度、自分の好きなおやつを買うために近くのスーパーに出かけるのと、月に1度、持病の緑内障のために大学病院に通うのだけが数少ない外出だ。しかし雨が降るとスーパーへの外出は取りやめ。時には、雨が降るかもしれないという理由で中止することもある。明けても暮れても家にへばりついて、うっとうしい。

夫に再就職してくれるよう何度も頼んだが、その気はまったくない。人材派遣会社から連絡が来ても毎回断るので、そのうち連絡すら来なくなった。仕事をしてほしいと何度も言うと血相を変えて怒る。仕方なく黙っていたら、すっかりくつろいでしまい、あっという間に65歳になっていた。

実は長男はアスペルガー症候群と診断されている。赤ん坊のときからとても育てにくい子どもだったが、学校に入るとそのシステムについて行けなくなった。学校も休みがちだったが、なんとか大学を卒業して、小さな会社に就職した。しかし人間関係がうまくいかず、退職。その後、自分の部屋にこもり始めた。

次男も長男と同じような道をたどり、やはり部屋に引きこもった。古く狭い団地の3DKに大人が4人。30代の長男と次男が一部屋ずつ、残りの一部屋を夫と私が使っている。