住んでいることが誇れるような物件

でも、そもそも、私の言う「良いですね」の意味は、「ここが買いたいな」というよりは、「ここが買える人が羨ましいな」、なのですが、苦笑。だって「アラ還、独身、子なし、フリーランス」という私の属性と収入では、こーんな高額の融資なんて通らないでしょうから。金利だって、最大の優遇金利は会社員なら付くでしょうが、私のようなフリーランスだと、もっと高くなるはずです。担当者は「このエリアで、南向きで、単身者向きの物件は、なかなかないですよ」と猛プッシュ。必要書類は後でメールで送ってくれればいいからと、強く勧められました。是が非でも、すぐ売ってしまいたいみたいでした(もちろん、売れたら担当者の手柄になるのでしょう)。

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翌日曜日は、こんどは新築の完成前販売住戸の説明を聞きに、大手デベロッパー2社のショールームに行きました。こちらは図面だけでの個別の販売説明会です。私鉄E駅徒歩4分の物件Fは、北西向き4階30平米4790万円。別の私鉄G駅徒歩3分の物件Hは、南東向き7階43平米5140万円。この二つの物件とも住宅ローンが使える広さですし、Hは住宅ローン控除の対象にもなります。オートロック、宅配ボックスは標準装備。新築でも、狭ささえ我慢すれば、都内でも物件がある、という例にはなるでしょうか。ただ、どの部屋がどの向きで何平米いくらか、という詳細な情報はネットでは分からないため、わざわざショールームまたは個別相談会に、アポを取って足を運ばないといけないのが、新築に手が届きにくくしている感じです。

例えば、F。こちらもまた高級感のある内廊下設計で、スタイリッシュなデザインの外観です。住宅街の中の低層マンションで、メインは高額所得者だろうという高級物件です。建物の性能や設備、管理組合の運営補佐まで、さすが大手デベロッパーの分譲物件というグレード感でした。ただし、単身者向けの狭い部屋はほとんどが北向きでした。南向きだと広く高くなり、最低でも45平米約7000万円になります。これじゃコーポラティブハウスと同じ予算です。ならば自由設計が出来るほうがいいと、コーポラティブを選ぶ人がいるのも納得です。

とはいえ、E駅徒歩4分は魅力的でした。なんとか荷物を処分して、30平米にうまく住むことはできないだろうかと、その場で真剣に悩んだほどです。押したら落ちると思われたのか、営業の「チーフ」の女性S氏から、「ローンの事前審査を受けませんか」と、ここでも、しきりに勧められました。「提携銀行の提携ローンを使えば、金利はわずか0.345%です」。これもまたDと同じ金利です。

「ステキなデザインの外観ですよね」と感想を言うと、「あの家に帰るんだ、ってわくわくするようなマンションに住んだ方が良いじゃないですか」とS氏に説得されました。確かに、築30~40年の中古マンションだと、どんなにきちんとメンテナンスをしていても、くたびれてきます。デザインも画一的な団地っぽいものが多く、内装は新しくできても、外観の古さは否めません。どうせ住むなら、そこに住んでいることが誇れるような物件にしたほうがいい、というS氏の主張は納得感があります。確かにその通り。あやうく、30平米の狭さに目をつむって、購入申し込みをしそうになってしまいました。幸か不幸か、後ろに次のアポがあったため、書類は後で送りますと言って逃げて来ました。