経済ジャーナリストの荻原博子さんが、お金に関するお得な情報をわかりやすく解説する新連載「トクする!荻原博子のマネーNEWS」。今回は「意外に知らない?<みなし繰下げ制度>」です(イラスト:さかがわ成美)

意外に知らない?<みなし繰下げ制度>

4月から、年金を65歳以降にまとめてもらう方法が少し変わりました。

そもそも公的年金の受給は65歳からですが、「繰下げ」手続きをすれば75歳までのいつから年金をもらい始めてもOK。そして、受給開始年齢を1ヵ月遅らせるごとに年金額が0.7%増えます。以下、65歳から月10万円の年金を受給できる人を例に見ていきましょう。

70歳まで受給を待つ=5年分繰下げると(10万円×0.7%×60ヵ月)、70歳からもらう年金は月々4万2000円増え、毎月14万2000円を一生涯もらえます。75歳まで受給を待つと10万円×0.7%×120ヵ月となり、月18万4000円を一生涯もらうことができます。

意外と知られていませんが、この年金は、月々だけでなく、最長5年間分を一括でもらうことも可能。

たとえば、65歳から月10万円の年金をもらえる人が、受給開始や繰下げの手続きをせず、70歳から受給する場合。65歳からもらえるはずだった月10万円(年間120万円)×5年分=計600万円を一括受給することができます。その場合、割り増しはナシ。

70歳以降にもらう年金は5年前の65歳時点の年金となるので、月10万円を一生涯もらうことになります。

昨年、繰り下げできる期間が75歳まで延びたことで、年金をまとめてもらう方法も変わりました。2023年3月までは、「年金は5年間請求しないと時効になって受給権が消滅する」というルールがあったため、前述のケースだと70歳でも75歳でも、一括で受給すると600万円しかもらえず、75歳からの年金は月10万円でした。