「棚の一つ一つにファンがいる」から生まれるもの

由井 ほかにお店の特徴として、特に「集客力が強い」と感じています。棚主それぞれが、それぞれのSNSを通じて、告知や紹介をしているので当然かもしれませんが。招き猫がそれぞれの棚にいるようなものですね。

右・由井緑郎さん「この棚でしか買えないといった本をつくり、それ相当の値付けを考える、というのもこの店ならではの楽しさです」(写真:本社写真部)

 

清水 それぞれの棚にファンが付いているのか。それって面白い。ファンが求めているものが可視化、というか物質化された棚というべきなのかな。そもそも本は「実際に手に取ることができる」のが、最大の魅力でもありますしね。

由井 書店や出版社なら、たいてい一つはSNSのアカウントを持っていると思いますが、集客や告知もその一つだけで行っていたりする。このお店にはそれが360あって、それぞれが集客するわけですから、結果として非常に強い宣伝効果が生み出される、ということになります。

清水 なるほど。

由井 ここでうまれた棚貸しのシステムやメリットは、ほかの大手書店さんはもちろん、小規模な独立系書店さんや中古書店さんでも応用可能と感じていて。たとえば地方の書店なら、その地域の名士、あるいはその地方出身の人に、本屋を応援する意味でも入ってもらったりしても面白い。それこそ新潟県出身の清水さんに、新潟の本屋さんで棚を借りてもらう、というイメージでしょうか。その方の集客力で本が売れれば本屋さんも嬉しいし、棚を借りた方も、それで名前を広げることができればやっぱり嬉しいんじゃないかなって。

清水 うちの実家の周辺には、本屋さんがもう無いんですよね。それこそ自分が大学へ進学した20数年前に潰れてしまった。図書館は残っているけど、図書館で選ばれないような本だからこその価値もあるだろうし、本屋さんはやっぱり大事。そうした実感を持っているからこそ、本屋さんが残る可能性が生まれるのは嬉しいですよね。