広がる可能性
清水 棚主はどうやって募集をかけているんですか?
由井 空きが出たら、月初にSNSなどを通じて通知します。その都度、応募してくれた方のなかから抽選をしているんですが、平均して毎回2、30倍にはなるでしょうか。人気が高い分、店舗側のペースで仕事ができているので、その点は助かっています。
清水 本が売れる・売れないという意味で、棚の位置や場所という要素は大きい?
由井 やっぱり自然と目線に入る棚は強いですよね。ただ、なかなか手が届かないような高い場所でも、それはそれで戦い方があるというか。たとえば、うちは棚主から入荷してもらう際、希望された方の商品についてはサイトにも登録してオンライン販売を行っています。注文があれば梱包・発送もこちらで行う。ですので、このお店を通販窓口という意味合いで使っている方も。人気の同人作家さんだと、ここだけで一日に100冊売る、なんて方も珍しくありません。
清水 リアル店舗とオンラインで売れ行きがまったく変わる商品もありますもんね。
由井 どの本屋さんでも売っているような本を、そのままオンラインで売ろうとすれば、ライバルはAmazonやメルカリになる。それでは価格競争などの面で絶対に勝てない。その店ならではの付加価値を付けられない限り、オンライン販売って非常に厳しいんですよね。
清水 彼らと距離を置き、価格の戦いに巻き込まれてはいけない、と。
由井 だからこそ、棚に思い入れとか個性を表現してもらいつつ、本そのものもサインはもちろん、マーカーやメモ、さらには貼った付箋をそのまま残してもらったりと、とにかく付加価値を意識してもらっています。ブックオフではおそらく値段のつかないそれらが、この店なら大きな価値を持つ。
清水 棚の費用は、それぞれの面積や位置によって変えているんですか?
由井 はい。ベーシックな棚だと6000円台が多いですが、大きな場所で15000円とか。ほかの棚貸しの本屋さんなどを参考に、神保町という立地でこの棚の容積ならいくらぐらいならば、と計算して価格を決めています。ただ、価格設定そのものは「安い」と考えていて。ここで棚を借りたら、その瞬間、仲間の棚主が300人以上できるわけです。交流会をすれば同好の士が集まるから、そこきっかけでまた交流の輪もできたりして。
清水 面白いなあ。本が売れること以上に、そういった面のほうに魅力を感じている棚主も多そうですね。