すべては「書評」から始まった
由井 あらためて私自身について紹介しますと、社会人になって10年ほど広告代理店へ。その後2年弱、リクルートでコンテンツやマーケティングにまつわる仕事に携わりました。その流れで父・鹿島茂ともかかわり、父にまつわるコンテンツを整理しつつ、マネタイズするにはどうしたらいいのか、考えた一つが『ALL REVIEWS』という書評アーカイブサイトでした。
清水 なるほど。
由井 しかし、サイトだけではなかなかマネタイズできず…。 書評サイトの先攻者である「HONZ」と新潮社の「BookBang」、それぞれに足を運んで、どれぐらいのPVでどれくらいの収入が、といった話も聞いてきたのですが、やっぱりWEBサイト単体でビジネスを成立させるのは大変なんだな、と。
清水 難しそうですよね。
由井 サイトとしては、過去に各所へ掲載された書評を集め、許諾を得たうえでwebであらためて公開。そこを通じて本が売れたらアフィリエイトを得て、書評を書いた方へも収益を分配、といった仕組みを考えていました。でも、それには一日何十という書評と向き合わなければならない。当初、国立国会図書館に行って書評を集めながら、校閲や本との引き合わせをして。さらに著者の許諾を得つつ、デジタルデータを…といった過程を一人でやっていました。自分は恐らく世界で一番書評を読んだ人なんじゃないかな(笑)
清水 地道な作業ですね。
由井 そうするうちにキャパシティの限界を迎えたので、ボランティアを募集することに。すると、二人の枠に対して百人を超える方が応募してくれた。「本にまつわる仕事なら協力したい」と考える人は多いんでしょうね。これは興味深い発見でした。それこそ上は80代から下は学生の方まで、ボランティアの協力を得られるようになった後は、Slackを導入しながら組織を体系立てていき。そうした中で、ファンクラブのような組織が出来上がっていったわけです。
清水 なるほど。