ショッピングアーケード“パサージュ”を模した店内には、棚主が選んだ本を並べた書棚が並ぶ(写真:本社写真部)
減り続ける街の本屋さん。書店調査会社のアルメディアによると、2000年には21,654店あった書店数も、2020年5月の時点で11,024店と約半分に。この数字には売り場のない事務所や雑誌スタンドなども含まれるため、それなりに書籍を販売している店舗に限ると9,000店を切っていると言われます。町から本屋の灯を消さないために、もうできることはないのか――。その方法を探るプログラマーで実業家の清水亮さんと、神保町の共同書店「PASSAGE by ALL REVIEWS」の由井緑郎さんによる対談、その1です。

天国のような場所

清水 本好きな人にとっては天国みたいな場所ですね。「PASSAGE by ALL REVIEWS」さんは。 

由井 店舗全体はパリのショッピングアーケードである“パサージュ”を模していて、それぞれの書棚にはフランスに実在する通りの名をつけました。プロデュースとして父・仏文学者の鹿島茂に入ってもらっています。照明を落とせば、また様子が変わったりするんですが、雰囲気を含めてここを好きと言ってくれる方は多くいらっしゃいますね。 

編集 鹿島さん、書評家の豊崎由美さん、俵万智さんの本棚…。端から端までさまざまな棚に、さまざまな分野の選者が本を詰め込んでいるので、眺めているうちに時間を忘れてしまいます。 お店の概要について教えていただけますか?

由井 2022年3月、神保町の「神田すずらん通り」にオープンしたこの1階の店舗内に大小、362の棚があります。それぞれの棚には月額を払って借りている「棚主」がいて、彼らが置いた本などの販売をしている、というのが基本構造です。

清水 なるほど。

由井 お店のベースには、2017年に父が立ち上げた『ALL REVIEWS』という書評アーカイブサイトがありまして。サイトに参加していただいている書評家の方々には「書評家プラン」を設けて棚を用意している一方、月額を払っていただければ一般の方や企業にも棚をお貸しする、という仕組みを設けています。

清水 企業にも? それは面白い。