「最近つくづく思うのは、芝居にジャンルなんてないってこと。人間を描くという点では同じです」(波乃さん)

渡辺 でも最終的には立場を超えて、二人の苦労を理解する。そこが素敵ですよね。

波乃 この作品の初演は、杉村春子先生、初代水谷八重子先生、山田五十鈴先生を想定していたとか。でもギャラが高すぎてお蔵入りになったという噂が流れました。それで初演は、松子が新派の三代目市川翠扇先生、タキが北林谷栄先生、駒代が一の宮あつ子さん。

渡辺 北林谷栄さんもすごい役者だし、市川翠扇さんはビデオでしか観たことないけれど、その場にいるだけでオーラがあります。

波乃 翠扇先生は九代目市川團十郎の孫ですから。「男だったら、今ごろ團十郎を継げたのに」って言ってましたよ。

渡辺 改めてそんなすごい人たちがやってきた舞台だと思うと、気持ちが引き締まります。

波乃 台詞が多いから、覚えられるかしら。良重ねえちゃまはこの4月で84歳でしょう。心配になって「ちゃんと覚えてくださいね」と言ったら、「お客様が目の前にいたら大丈夫」ですって。

渡辺 さすが!