波乃 1年使わなかったものは処分するの。私が死んだら残された人は楽よ。

渡辺 私が突然死んだら、ほんと、はた迷惑だ。今、資料などは整理している途中なんですけどね。

波乃 でもね、芝居をやるには、孤独でいることも大事。とくにあなたは芝居を書くわけだから、余計そうなんじゃない?

渡辺 確かに。すべて満たされて幸せだったら、書くことがなくなっちゃう。怒りや不満も原動力になっているから。それにしても哲明さんが生きていてくれたら、老後、ほんっとに楽しかったでしょうね。

今回の芝居も、観てもらいたかった。新派の人も小劇団出身の私も、ベテランも若い人も、一緒になっていい作品に仕上げるために全力投球する。それこそ、芝居の醍醐味ですものね。

波乃 最近つくづく思うのは、芝居にジャンルなんてないってこと。人間を描くという点では同じです。

昔はジャンルがあると思っていたから、「ジャンルなんてないッ。演劇は一つだ!」と言い張る弟と大喧嘩になりましたけど。仏壇に手を合わせて謝ろうかなと思っています。(笑)


※2人が共演する舞台『三婆』は6月3〜25日に東京・三越劇場にて上演予定

新派百三十五年記念 六月新派喜劇公演『三婆』
 会場:三越劇場
 日程:2023年6月3日(土)~25日(日)
 公式サイト

波乃久里子さん、渡辺えりさんの記事が掲載されている『婦人公論』6月号は好評発売中!

『婦人公論』6月号の目次、購入はこちら