波乃 1年使わなかったものは処分するの。私が死んだら残された人は楽よ。
渡辺 私が突然死んだら、ほんと、はた迷惑だ。今、資料などは整理している途中なんですけどね。
波乃 でもね、芝居をやるには、孤独でいることも大事。とくにあなたは芝居を書くわけだから、余計そうなんじゃない?
渡辺 確かに。すべて満たされて幸せだったら、書くことがなくなっちゃう。怒りや不満も原動力になっているから。それにしても哲明さんが生きていてくれたら、老後、ほんっとに楽しかったでしょうね。
今回の芝居も、観てもらいたかった。新派の人も小劇団出身の私も、ベテランも若い人も、一緒になっていい作品に仕上げるために全力投球する。それこそ、芝居の醍醐味ですものね。
波乃 最近つくづく思うのは、芝居にジャンルなんてないってこと。人間を描くという点では同じです。
昔はジャンルがあると思っていたから、「ジャンルなんてないッ。演劇は一つだ!」と言い張る弟と大喧嘩になりましたけど。仏壇に手を合わせて謝ろうかなと思っています。(笑)
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