染色体の組換え

染色体は対(ペア)になって存在しますが、染色体のペア同士は、部分的に互いに交差します。「対」になった染色体のそれぞれに載った遺伝子同士を「対立遺伝子(アレル)」と呼ぶのですが、つまり、交差する染色体部分に載っていた対立遺伝子の或る群(部分)をトレード(交換)した結果として新たに構築された染色体が子に授けられていくのです。この興味深い現象を「組換え」と呼んでいます。

『競馬サイエンス 生物学・遺伝学に基づくサラブレッドの血統入門』(著:堀田茂/星海社)

人間の染色体数は46本ですが、男性の生体において精子が、また女性の生体において卵子がつくられる際には、ペアの染色体同士はおのおの分離され、つまりこれらの数は半減して、精子および卵子には23本ずつが挿入されます。

ここで重要なのは、23対のペアの染色体は、そのおのおののペアのどちらかがそれこそランダムに個々の精子や卵子に挿入されるということです。しかも1人の男性の精子といえども、その精子ひとつひとつには別の組み合わせの染色体が入っているのです。その組み合わせのパターン数は2の23乗、つまり800万通り以上にのぼります。

さらに、組換えという現象がランダムに起こっており、これが個々の精子および卵子に分配されていくわけですから、同じ男性の精子にしても、その膨大な数の精子が持つ遺伝子の構成はおのおのまったく違うわけです。つまり、一卵性双生児を除く両親が同じ兄弟姉妹同士の遺伝子一致率はほぼ50%(次項目で説明します)ではあるものの、じつにまったく違う遺伝子の組み合わせで生まれてきているのです。

競走馬に置き換えると、両親を同じくする全きょうだいの血統表はまったく同じですが、全きょうだいそれぞれが実際に保有している遺伝子は、組み合わせがまったく異なっている、ということがご理解いただけると思います。このように、われわれ「生き物」は唯一無二の個体となって、多様性を維持しているのです。