堀田さんいわく「全きょうだいだろうと、多くの異なる遺伝子を持っている」そうで――。(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
競走馬の血統は、競馬の重要なファクターの1つです。しかし現状では、血統に関する各種言説に、生物学の基本から逸脱しているものが多々見受けられます。「『血統』と『遺伝』は表裏一体です。」と語るのは、獣医師で、サラブレッドの血統を生物学・遺伝学的観点から探究している堀田茂さん。その堀田さんいわく「全きょうだいだろうと、競走馬は多くの異なる遺伝子を持っている」そうで――。

全きょうだいでもなぜここまで違うのか

競走馬を眺めてみれば、全きょうだいでもその競走成績が天と地ほど違う場合が山ほどあります。

「全きょうだいでもなぜここまで違うのか」という質問を受けたことがあるのですが、ここで、一人っ子ではない(一卵性双生児でもない)方々には自分と自分のきょうだいとの違いを思い浮かべていただきたいのです。

「こいつとは同胞と思われたくない」と思う方も少なくないのではないでしょうか。

そのように思われたあなたは、自身のきょうだいとは価値観の相違があるということであり、そのような相違は、心の在り方を左右する遺伝子保有状況の違い(=形質の差異)に拠るとも推察されうるのです。

以前、SNSを眺めていたら、Aという馬の半弟のBという馬は、父が違うから特性がこのように違う……というようなコメントがありました。

確かに父が変われば、そのきょうだいの特性も変わるでしょう。

ただそれ以前に、全きょうだいにおいても、一般に思う以上に違う部分があることを力説したくなることがしばしばあります。