衝動に正直な自分を大切に

私のことを映像作品で見てくださっている方が多いと思うのですが、今回の『ピノキオの偉烈』は、コロナ禍ではできなかった“お客さまの前で演じる舞台”です。映像作品とくらべて舞台は、稽古が重要度になりますし、一番の違いは役者の目の前にお客さまがいることだと私は思っています。舞台は、生のお芝居を観ていただくからこそ入念な稽古が必須。一方、映像は新鮮で爆発的なパワーやドキュメンタリー的要素などの魅力を追う面も強いので、実は稽古は敢えてしないことが多いです。

このような特徴を考えると、一見舞台のほうが大変だと思われがちなのですが…実はお客様が目の前にいる状況は、お客さまからパワーを直接いただくことができるので、カメラに向かって演じることと比べて、本当に心強いんです。今回も、お客さまのパワーに接することが楽しみで、その日のために頑張ろう!と稽古をしています。

正直なところ、『ピノキオの偉烈』は、今までで一番、すべてにおいて想定外の稽古、そして作品だと思っています。私がライフワークとして取り組んできたダンスにおいても、今まで勉強してきたジャンルではないものが要求されているのかもしれません。

ジャンルレスという点で、コンテンポラリーダンスが主な要素だとは思っていますが、それだけではない何かが必要だと感じました。あえて言葉にするなら「演技とダンスの間にある何か」。暗闇の先に光を感じつつ、まだまだ見えてこなくて、「人間になりたい」と足掻くピノキオのように、私は今「ピノキオになりたい!」と一生懸命足掻いています。