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自分の問題としてとらえてほしい

こういった諸問題に加え、地方では都市部とまた違った負担がのしかかる。今回の原告の中で唯一、福島県から参加している佐藤さんがこう語る。

「冬は、積雪や路面の凍結で移動に倍以上時間がかかりますが、賃金の補償はありません。私の勤務する小規模事業所がカバーしているエリアは東京23区の1.8倍。自家用車で、20~30kmの移動もあり、片道1時間を超すことがあるものの拘束に見合った賃金は補償されません。

長距離移動になるのは、ヘルパー不足と、ALSなど難病者の医療的ケアを、低賃金のヘルパーが担っていることも関係しています。難病者の介護は仕事に危険を伴い、長期入院リスクもあるため受け入れる事業所が少なく、大手事業所は避ける傾向があります。厚労省は、そういった事業所に対し、労働基準法が適正に守られていないとして、労働条件を詳細に示した文書(通達)を繰り返し出しています。

『6割の休業手当』については、すでに仕事としてシフトに組み込まれて休業させた場合、代替業務か休業補償を義務付けていますが、担当者が決まっているため、代替は現実的に不可能。

実質労働時間のみが補償される『出来高払い』制度では、キャンセルになると事業所に介護報酬が入らないため、利用者の病状悪化による長期入院などのキャンセルに休業手当を補償すると、事業所は運営できなくなります。キャンセルのためにヘルパーは月に数万の減収になることもあり、生活が安定しません」

通達では、「介護報酬の中で、事業費も人件費もまとめて考慮している」と主張しているが、その割合が不明だという。

「物価が上昇し、最低賃金も1.4倍に跳ね上がっているのに、介護報酬は下がり続けていて、整合性が取れません。国が介護を市場化し競争を強いたことで、事業所が利用者を選ぶ時代だと言われるようになりました。

でも、倒産の危機にありながら、遠距離や難病の利用者も見過さず、受け入れている事業所もあるし、それを支えているヘルパーがいるのです」