腕を組んでの写真なんて珍しいんです」というお二人。ご自宅のデッキで(撮影◎本社・奥西義和)
2023年6月7日放送の『徹子の部屋』は、幾多の名曲を生み出した作詞家・永六輔さんと作曲家・中村八大さんの「六八コンビ」の曲をスタジオで披露したゲストの傑作選。当時『夢であいましょう』で共演していた、田辺靖雄と九重佑三子夫妻もデュエットを。今も2人でコンサート活動やCDリリースをしているご夫妻。馴れ初めから金婚式までの歩みを語った対談記事を再配信します。

*********
「シャボン玉ホリデー」「ザ・ヒットパレード」「夢であいましょう」「若い季節」といった音楽バラエティー番組で、観る者すべての胸をときめかせた田辺靖雄と九重佑三子。今年めでたく金婚式を迎えた芸能界の「元祖おしどり夫婦」は、二人でのコンサートを定期的に開催し、新曲も出しながら精力的に活動を続けている。「夫婦は一心同体に非ず」をモットーに50年を過ごしてきた二人にとって、歌手という仕事、そして夫婦のありようとは? (構成◎吉田明美 撮影◎本社・奥西義和)

芸能界に入ったのは、二人とも同じぐらいの時期

九重 わたしたちも気がつけば後期高齢者。なんかあっという間だったわね。

田辺 この家でずっと一緒に暮らして50年。早いよね。二人が出会ったのは17歳のときだから、人生の大半を一緒に過ごしてきたことになる。

九重 私たち、いわゆる夫婦の危機ってなかったのよね。けんかもしないし…。

田辺 性格が違い過ぎてけんかにはならない。

二人が暮らす都内の住まいは、もともと田辺さんの実家。何度も手を入れて丁寧に暮らしてきたせいか、築70年とは思えないおしゃれな洋館だ。リビングルームで目を引いたのは、壁にかかる大きなお二人のツーショットの額。一見写真に見えるが実は有田焼で、窯元が何度も焼き直して完成させた作品だという。
森繁久彌さん宅にあったものと同じ、という暖炉の上にはお孫さんを含む一家の写真が何枚も並び、田辺家の歴史を物語っている。

九重 芸能界に入ったのは、二人とも同じぐらいの時期。田辺さんは、渡邊美佐さんにスカウトされたのよね。

田辺 僕の父はNHKのアナウンサーでしたが、小学生のときに亡くなってしまい、母がNHKでヘアメイクの仕事をしながら女手一つで育ててくれたんです。母は僕が少しでも元気になるようにと、児童劇団に入れてくれて。時代はちょうど安保闘争の時期でね。担任の影響もあって、中学生からデモに参加したり。『歌声喫茶ともしび』で聞こえてくるような労働歌も歌ったよ。僕ぐらい労働歌を歌える歌手はいないと思う。(笑)