ヘリコプターによる撒水の威力

樹木が燃えて火が大きくなると、強い上昇気流が起こって、火のついた枝などが飛ばされて飛び火するので、山林は燃えはじめるとなかなか消火できない。先の足利市の場合、燃えている現場に消防車は近づけないし、山には水がないので、消防団員や自衛隊員など延べ1900人が出動して、人力で麓から水を運び上げた。

そんなとき、ヘリコプターによる撒水が威力を発揮する。足利市では1500トンの水がヘリコプターで山に撒かれたが、現場中継を見る限りなかなか火は消えなかった。

この撒水は火を直接消すのが目的ではなく、周辺を湿らせて延焼を防ぐためのものなので、空から水が落ちて来たからといって、火の手はすぐには弱まらない。

ニュースを見ている人はまどろっこしく感じただろうし、本当に効果があるのかと疑いを持ったかもしれない。

山火事を消すためには、このヘリコプター撒水のように燃えにくくするほかに、燃えるものをなくして延焼を防ぐ方法も有効である。

迫り来る炎の壁を前に、防火服を着た消防士がチェーンソーで大木を伐り倒すのをアメリカのニュース映像などで見るのはこれで、江戸の火消しが纏(まとい)を大屋根に立てて、家屋を打ち壊していったのも同じだ。見ているほうは勝手なもので、こちらは火消しも消防士も勇ましく、そして頼もしく見える。

あらかじめ山火事が起こりそうなところの木を伐っておくのが防火帯で、一番確実で危険が少ない。

カンバ林を横断する防火帯(『森林に何が起きているのか――気候変動が招く崩壊の連鎖』より)

さらに、山火事が起こったあと、防火帯の中の可燃物をなくすために、防火帯の周辺に火をつけて、火事の前線までのあいだの可燃物を燃やしてしまう方法もあるが、効果的に実施するには地形や風向きなどを考える熟達した技術が必要だ。