奥さんは不味(まず)いチャーハンを食べて家を出ていった……

子供が生まれたときは本当に500円くらいしか持っていなくて、仕方ないので友達にお金を借りてから子供の顔を見に行きましたね。

それで奥さんも退院してきたけどまだ産後間もないし、たまには僕がメシを用意してやろうと思ってチャーハンを作ってあげたことがあるんですよ。

『六角精児の無理しない生き方』(著:六角精児/主婦の友社)

そしたらそのチャーハンがよほど不味かったらしくて奥さんがゲェ~って吐いちゃって。

そのまま具合が悪くなってしまったので近くにあった奥さんの実家に連れていったら、それきり二人は戻ってこなかったんです……。

ちゃんと赤ちゃん用のベッドも買っていたのに、1日か2日くらいしか寝ていなかったのが悲しかった。

けど、その使われないベビーベッドがある部屋でポツンと一人で暮らしていた僕はもっと悲しかったかな。

あのころは金もなさすぎてCDを売って生活費にしているような状況で、栄養もとれず体調が悪くなっていたときに、それを見かねた有馬自由(扉座所属俳優で、六角精児バンドのメンバー)がキムチ鍋を作りに来てくれて、それでどうにか体力を取り戻したこともありましたね。

だから子供を産んだばかりなのに、不味いチャーハンを食べて家を出ていった奥さんには本当に申し訳ないと思ってるんですよ。

でもしょうがない、あのころの僕はそんなどうしようもないダメ男だったんだから。

ギャンブル依存症のひどいやつを10年くらい続けていたんですよ。