母は強し。娘は……
またしても痛みが引くのを待つ日々。どんな運動なら怪我をしないか悩んだ末、今度はウォーキングを始めた。外に出るのは嫌だが、体を壊すよりはマシと恐る恐る始めてみた。しかしいくらやっても効果を感じない。距離を延ばすべきかと思うが、毎日何時間も歩く余裕はない。やがて寒くなると外出も億劫になり、いつしかやめてしまった。
NHKのテレビ体操もやってみた。朝6時25分にテレビのタイマーと同時に起き、半分寝ながらゾンビのようにこなす。しかしこれも寒さに負けた。布団の中でグズグズと二度寝をしてしまって……。
困った。運動量が増えない。このままではまずいと、恥を忍んで母に相談することに。昭和の女は偉大だった。「家中の掃除をしなさい。床は雑巾で全部拭いて磨くの。見えているところを上から下まで全部拭くのよ。置いてある物も全部。それが一番運動になるし、家も綺麗になる。一石二鳥じゃない」と言われたのだ。
部屋が散らかっていたので、拭き掃除をするための片付けから始めなくてはならない。「見えるところ、物を全部拭く」という指示なので、収納してしまえば拭くべき箇所は減る。
運動するための掃除なのに、手間を減らすのは本末転倒だが、実際に部屋が片付くのだからよしとしよう。仕事の隙間時間を使って、1日かかってなんとか1室だけ、床、壁、窓ガラスをすべて拭き終わった。
腕はぷるぷる震え、筋肉痛になったが、空気まで綺麗になった気がして気持ちがいい。終わった勢いで「褒めて!」とばかりに母に電話をする。母は「頑張ったわね」と言った後にこう続けた。「1日では終わらないでしょう?一通り全部の部屋が終わったら、今度は2周目をするのよ」。
私はその場で挫折した。いったいいつになったら私の体は引き締まるのだろう。自分でもわからずにいる。