離婚したひとり親家庭の生活の基盤となる養育費。しかし不払いの罰則規定もなく、実際には支払われていないケースが多い。また、相手と連絡をとりたくない、居場所も知らせたくないなどで、諦めている人も少なくないだろう。ただ、「養育費」はあくまで「子」の権利。あきらめずにさまざまなサービスを調べてみては。(取材・文=樋田敦子)

逃げ切られないために

「13年前に離婚した元夫とは、調停調書で養育費月6万円という取り決めをしているのに、40ヵ月支払って以降、現在まで不払いです。これまで裁判所で2度の履行勧告をしましたが、連絡なし。3月に強制執行の手続きをしたが、勤務先から『従業員登録なし』の返事。専門学校生の娘の学費は親戚の援助と奨学金で工面しました。未払いの約700万円を遡って取り戻したいのですが――」

そう話すのは、都内に住む自営業の澤上恵子さん(50歳・仮名)。現在は元夫の勤務先を突き止め、差し押さえに奔走している。

厚生労働省の「全国ひとり親世帯等調査結果報告」(2016年度)によれば、母子世帯で養育費の取り決めをしているのは、全体の42.9%で、そのうち現在も支払いを受けている母子世帯は24.3%どまり。夫の転職や転居で連絡先がわからなくなり、養育費の未払いが続いているケースがある。

弁護士の大胡田誠さんは離婚相談を数多く手がけているが、勤務先や居場所がわからない場合、養育費の未払い金を回収するのは、かなり大変だという。

「公正証書や判決があって居場所がわかっても、資産状況がかなり悪く、結局受け取れないときもあります。子どもが成人するまでの十数年先のことを設定した取り決めなので、そもそも不安定な契約なのです」

元夫が自己破産しても、養育費は子どもを養育するための費用なので免責はされず、支払いの義務は消えない。大胡田さんは、公正証書に「未払いの場合にはただちに強制執行に服する」旨の条項を入れ、支払い側の両親を連帯保証人にするなどして支払いを確保するようにしているが、あまり有効とはいえないと言う。払わない相手が逃げ切る状況を解決するには、どんな手段があるのか。

14年から離婚前後の子どもの養育支援に力を入れている兵庫県明石市では、総合保証サービス会社「(株)イントラスト」(東京都)と業務提携し、不払いになった養育費を補填するパイロット事業(3年間)を始めた。

「明石市では以前から、離婚時に養育費や面会交流を取り決めた合意書を作成するよう勧めてきましたが、どうしても養育費の未払いがある。子どものためにしっかり受け取れるようにと、行政として一歩踏み出したのがこの事業です」(明石市市民相談室課長・村山由希子さん)