「40代で1000万円」は、20年前のデータ

一部の私大職員が現在、40代で1000万円以上の年収を得ているという事実はあります。これは各大学の給与規定や俸給表で確認できますし、インタビューでも度々、実際にそのくらいを得ているという声をいただきました。

信憑性は保証されませんが、転職者向けの口コミサイトなどでも、一部の学校法人では待遇に関してそのような書き込みが見られますね。

『大学職員のリアル-18歳人口激減で「人気職」はどうなる?』(著:倉部史記・若林杏樹/中央公論新社)

しかし私大といっても経営状況はさまざま。世間的に多くの方がイメージする「有力私大」は、入学難易度が高い、学生数が多いといった条件を満たす大学かもしれませんが、難関私大でも教職員の待遇がそこまで良くないという例は少なからずあります。

「誰でも」という表記も大きな誤りです。課長、部長と昇進を重ねていった方の中には年収1000万円を超える例があるかもしれませんが、経営状況が良い学校法人であっても、全員がそうしたポストを得ているわけではありません。プロパー職員のキャリアパスが今後も保証されているとは限りません。

何よりも重要なのは、この「40代で1000万円」は、20年前に入職した方のデータだということです。

この20~30年間で大学を取り巻く社会状況は激変しました。しばしば「**大学ではボーナスが6.5カ月分支給される!」といった記述をブログやSNS等で見かけるのですが、20年前に6カ月分以上のボーナスを支給していた大学が、現在は4カ月分ちょっとしか支給していないという例も(切ないですが)実際にあります。

学校法人はどこも現在、人件費の抑制に熱心です。ある難関私大では数年前、俸給表が大幅に改定されました。その年の前までに入職した教職員と、その年以降に入職した教職員とで、生涯にわたって得られる給与がまるで違うのです。

既に在職している教職員の待遇を下げることは難しい。反対意見が相次ぐでしょうし、裁判にもなり得ます。ならば新規参入される方の待遇を下げるほうがハードルが低いというわけです。

ウェブ上で見つけられる「これまで」の年収実績の数字だけを見ていては、こうした実態に気づけません。