人事評価制度の導入

より多くの学校法人で実践されているのは、人事評価制度の導入でしょう。俸給表の変更は反対されやすいので、規定そのものには手を着けず、ルールの運用によって人件費を抑制するのです。

さまざまな条件を満たした方だけが昇給できるような人事評価制度を作れば、「給与が上がらないのはあなた自身の責任だ」と言えます。

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人事評価制度という取り組みにはさまざまな意義がありますし、制度自体を否定するつもりはありません。ただ経営者の立場になって考えれば、人件費の総額を大きく増やすような制度なら導入しないだろうと想像はできます。

人件費は学校法人の支出のかなりの部分を占めます。それを減らせる制度だから経営陣は積極的に導入するのではないでしょうか。事実、学校法人の経営陣に対して経営アドバイスを提供する団体はいくつかあるのですが、そうした団体がウェブ上で公開しているレポートには人件費抑制のためのさまざまなアイディアが紹介されており、評価制度についての言及も見かけます。

教職員の給与をもっと下げるべきだと考えている経営者は、一定数いるのではと思われます。「私大職員の年収は、平均で734万円」というデータも、一部のブログ等でさかんに喧伝されています。

ほとんどの場合、出典も明記されていないのですが、特定非営利活動法人大学職員サポートセンター(2022年11月に解散を発表)が2007年に公開した「大学職員希望者のための就活セミナー」 という資料に、その数字を確認できます。

「日本私立学校振興・共済事業団資料より引用」とあり、2005年分のデータとして、「平均年齢42.8歳、平均年収7345千円」という記述があります。引用だらけで一次資料をたどれないため、この調査結果が専任事務職員だけを抽出したのかどうかも不明ですし、それ以前に18年も前のデータです。

各学校法人の労働組合が紹介している資料などを参照する限り、各種の手当てなども廃止または減額の方向にあります。人事部に所属する現役職員の方にも何人か取材で確認しましたが、「どう考えても平均はもっと下がっている」というご意見ばかりでした。「734万円」は鵜呑みにしないほうが良いでしょう。