億超えは当たり前

さすが軽井沢と思ったのが、駅前に何軒もある立派な店構えのしゃれた不動産屋です。高級新築別荘の販売事務所や、土地付き別荘専門らしき業者もあります。金回りが良さそうなのは、「軽井沢ブランド」の強さの証左でしょう。窓に貼られた売買物件のちらしを見ると、……6.2億、5.7億、5.35億、3.2億、……億、億、億!!! 東京都心の新築マンションと見まごう価格帯です。(写真)

軽井沢駅前のリゾート物件を扱う不動産屋に貼ってあった戸建て別荘のチラシ。売り出し価格6億5000万円、6億2000万円、5億7000万円、5億3500万円、3億2000万円はいずれも成約済。2億8000万円だけ売却中だった。ゼロを一つ数え間違えたかと思う価格帯だ

新築別荘だけでなく、中古別荘でも、億超えは当たり前。リゾートマンションも1億近いものが多く、それらは「ドッグラン付き」「ワイン庫付き」「温泉付き」などと設備を謳っています。犬連れで遊びに来て、温泉に入り、ワインを楽しむ――お金持ちの「いかにも」な別荘ライフが想像できます。そのうち感覚が麻痺してきて、1億円の土地付き中古別荘がお安く見えてきたほどです。いや恐ろしい。

誰が買うのかしらと不思議ですが、東京の億ションを買うような外国人投資家や、日本人起業家らが軽井沢に別荘を持つのでしょうか。かつてレノン&ヨーコも訪れたり、(噂では)ビル・ゲイツの別荘があったりと、外国人の間でも知名度は抜群の場所です。東京から新幹線で1時間の地の利と温泉もあり、人気なのでしょう。値崩れしないからと、将来の転売を狙って、投資半分で買う人もいるかもしれません。逆に、安い物件のほうが探してもなさそうで、ホテルやレストランなどで働く一般庶民は、どこに住めるんだろう?と心配になるほどです。

軽井沢ほどの総額ではないですが、値上がり率だけ見れば、不動産がバブっている地方都市は他にもあるようです。東京から新幹線で1時間圏内の地方として、軽井沢と並んで密かに人気との噂のある静岡で、聞いてみました。JR静岡の周辺駅では、このところ、中古の住宅や住宅用地が割安感から人気で、品薄状態だそう。相場の3倍ほどで取引されているそうです。

地元の不動産賃貸業者がぼやきます。「古家や空き家はあっても、相続のタイミングでもないと、なかなか売りに出ません。でも駅近物件はまだ割安感があるので、売り物が出たらすぐ売れる状況です。しかも急に値上がりしていて、路線価換算で相場なら300~400万円の古家付き土地が、いま、1000万円で売れます。しかも、金曜に物件情報が出て、週末に買いが入り、翌月曜には契約といったスピード感です。良い家はすぐ売れてしまいます」。軽井沢とは文字通り桁が二つ違いますが、価格上昇トレンドが起きているようです。底値がずっと続いていたため、交通の便が良い分、割安感があるのでしょう。

もちろん、こんなふうに価格が上がるのは一部の地域だけ。軽井沢などの「ブランド地域」や、交通の便が良かったり、再開発などで好条件が揃っていたり。それ以外の、ほぼすべての地方都市は、人口流出による人口減と、それに伴う空き家対策に頭を痛めています。需要が減れば、需給バランスが崩れて価格は安くなる。それが経済の法則です。実際にどうなのか、JR駅を起点に、何ヵ所かの地方都市も見に行きました。