「私は上のふたりより先に結婚してはダメと両親から言われていたから、内心、早く結婚してほしいと思っていたのよ」(由紀)

7cmのヒールを履いて歌い続けたい

由紀 お姉ちゃんが帰国するまではお互い別の世界に生きている感じで、交流が少し減ってしまっていたけれど、一緒に歌うようになってからは支え合う関係になったわね。

安田 童謡回帰は、私たちそれぞれにとって、人生のターニングポイントだったと思うわ。

由紀 安田音楽事務所の社長でもある母がその中心にいたわけだけれど、いまから20年ほど前に体調を崩してしまって。『NHKのど自慢』の収録でブラジルに行くことになった時、いつもなら付き添ってくれるのに、「移動時間が長いから私はやめておくわ。ふたりで行ってらっしゃい」と言うから、「あれっ?」と思ったの。

安田 その時、母は胸にしこりがあるのに気づいて病院に行き、乳がんが見つかって……。手術で切除したけれど、目に見えて体力が落ちてしまった。歩く速度も遅くなってしまったから、移動時間も余裕を見てスケジュールを組むようにしたのよね。

由紀 母のプライドを傷つけそうで、「杖を使ったら?」「車椅子を使ったら?」と言い出せなくて。

安田 そうそう。ふたりで「どうしたらいいんだろう」って、よく話していたわね。

由紀 ロサンゼルス公演の際、現地の方が「お母さん、これを使うとラクですよ」と車椅子を持ってきてくれて。母が「あら、いいわね」と言ってくれた時は、ほっとしたわ。

安田 でもその後、入退院を繰り返すようになってしまった。

由紀 さらに、がんが転移して、お医者様から私たちに余命宣告があって……。

安田 母には伝えないと、きょうだいで決めたのよね。