高齢男性が揉み合いの末死亡

特に山菜採りの時期には、母子グマによる人身事故が目立つ。

北海道厚岸町の中心部から南東に約7km、太平洋に突き出た半島のような部分にある山林も、春になるとアイヌネギを求めて多くの人が訪れる。釧路市に住む当時60代の夫婦もこの日、午前10時頃から入山し、山菜採りを楽しんでいた。

30分ほど経った頃だろうか、突然「ギャー!」という男性の悲鳴が聞こえ、妻が振り返ると、100mほど先にいた夫がクマと揉み合いになっているのを目撃。妻は慌ててその場から離れ、道路脇に停めていた車に戻り、「夫がクマに襲われている」と110番通報をした。

『日本クマ事件簿』(著・刊:三才ブックス)

すぐに厚岸署員が現場に駆けつけ、頭部から血を流して倒れている男性を発見したが、その場で死亡が確認された。頭や顔に、クマとみられる爪跡や噛まれたような傷があったという。妻はすぐに逃げたため、怪我はなかった。

町道から約600m離れた事故現場付近は、地元住民からは「クマの通り道」と呼ばれ、警戒されているエリアの一つだった。厚岸町も公式ホームページなどで注意喚起をしていたが、山菜採りの穴場として、事情を知らない町外からの来訪者が後を絶たず、危険を感じている住民も多かったという。

春は、山中でクマと鉢合わせる確率がぐんと上がる。冬眠から目覚めたばかりのクマは空腹のため、山菜を求めて山を下りて来ると同時に、人間は山菜を求めて山を上るからだ。