営林署作業員が襲撃され食害に遭う

造林作業などで人が多く入る山中でも、事故は起きている。以下は、実際に営林署作業員がヒグマに襲われた事故である。

1973(昭和48)年9月17日、厚沢部町の山中にて6人で造林作業をしていたところ、午前11時30分頃、作業員の一人であるA(45歳)の「おーい」という声が聞こえた。

不審に思った仲間が駆けつけたところ、Aの姿はなく、エンジンがかかったままの刈払機が放置されていた。慌てて周囲を探していると、母子のヒグマが現れて襲いかかってきたので、ひとまず下山。

午後3時頃、猟師を伴い再度現場を訪ねると、クマと出遭った現場から40mほど離れた雨裂(雨水の流れによって削られた、溝状の地形)で、衣服を剝がされた状態で亡くなったAを発見した。

このときの母グマの行動は、防衛行動だけに止まらなかった。

当初、母グマは子グマを守るためにAを襲ったと考えられる。しかしその後、事故現場から離れたより安全な場所へと遺体を移動させていること、衣服のほとんどを剝ぎ取っていることなどから、最終的には食害、つまりAを食べる意志があったと思われている。