(写真提供:Photo AC)
全国各地で多くの目撃情報が寄せられているクマ。今年もすでに人が襲われる人身被害が起きています。特に母グマと子グマの親子連れは危険と聞きますが、実際に死亡事故へ至った事例も。人はどんな状況で母子グマに遭遇し、どのような危険があるのか。『日本クマ事件簿』に掲載された過去の事件から紐解いてゆこう。

知らずに近づいて

子育て中の動物の多くは、子どもを守るために攻撃性が高まる。クマも同様で、子グマと一緒にいる母グマに襲われるという事件が、日本ではたびたび起きてきた。

2001(平成13)年4月、北海道白糠町で、山菜加工会社の女性Aとその長男、同僚男性の3人がアイヌネギを採りに山に入った際のこと。

午前11時頃、Aは途中でほかの2人から50mほど離れたところでアイヌネギを採っていた。

すると、Aの「クマだ!」という叫び声とヒグマの吠える声を、離れた場所にいた息子と同僚が聞き、声のする方へ駆けつけたところ、沢沿いの斜面にAが倒れており、そのそばに1頭のヒグマを目撃。

二人はなす術もなく、直ちに下山して110番通報した。

捜索に入った猟友会会員の話によると、雪に残った足跡から母グマと、足跡の横幅約6cm以上の1歳2カ月と思われる子グマの親子連れだった可能性が高いという。

まずは前頭額部を引っかかれ、Aは反射的に頭を振り、さらに左右顔面と頸部、右前胸を引っかかれ、あお向けに倒れたところをさらに腹部を攻撃された。

その後に執拗な攻撃がないこと、食害の被害がないこと、そして声を聞いて駆けつけた息子と同僚男性には向かってこなかったこと、その後は逃げて姿を消していることから、ヒグマがAを襲った理由は、たまたま子グマを連れて歩いていたところ、知らずに近づいてきたAと遭遇。子を守るために排除しようとして襲ったものとみられる。