長谷川伸とか山本周五郎の名作に挑戦

だから僕のステージでは、あえて名作ばかりを取り上げています。
長谷川伸とか山本周五郎とかね。何度も上演されてるようなものを選ぶと、アラが見えて厳しい批判を受ける可能性もある。だから本当はやりたくないですよね。実際に誰もやらないです。でもあえてそこにチャレンジする。それだけ自信をもってお客様にお届けしているという自負があるんです。

当時、いい芝居をやっていたのが新国劇です。島田正吾さんや辰巳柳太郎さんね。
そこで指導している人にも教えていただきました。

あるとき、1人の役者さんと向き合って芝居した時に、セリフを言うたびに脇に差していた刀が動くんですよ。それを見たときに、衝撃を受けましたね。そうか、腹式呼吸で声を出しているから、つまりおなかでしゃべっているから、刀が動くんだと。
当時の芝居って、マイクを使わずに一番後ろの席までセリフを届けていたんですよ。

僕がここまで歌ってこられたのは、その時に身に付けた呼吸法もあると思います。体で声を出す、おなかから声を出すという原点を作ることができたんですね。
低い声でもちゃんと響かせて、通るようにしないといけない。実際にやってみると簡単ではありません。マイクを使って歌うのとは全く違うんです。そこを会得することができたのは大きかった。

前半のお芝居でがんばりすぎて、後半、ショーで歌えなくなったら大変ですからね。
長谷川伸さんの時代から、島田正吾さんが得意としているお芝居など、新国劇には本当にお世話になりました。

ほかにも、十七世中村勘三郎、大川橋蔵、森繁久彌、森光子などとも親交があったという五木ひろし。ジャンルを超えた付き合いが、すべて五木ひろしの舞台に集約されてきたという。次回以降でその秘話についても語る―――。

※次回は「五木ひろしが語る~~昭和歌謡史(5)」をお届けします。


9月20日発売シングル「時は流れて・・・/あゝ上野駅/あなたに

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