理想の「終の棲家」
実は、一度、購入申し込みまで行きました。でも、あえなく玉砕してしまいました、残念。プロポーズしたのに、フラれてしまったようなものです。その物件は、Z駅から数駅離れた各駅停車駅から、徒歩6分、そこそこ築浅(2004年築)、1LDK40㎡、西向き、4階建ての4階でした。ベランダからの眺望が抜けていて気持ち良く、周辺には大きな川も、占いでNGの施設もありません。金額的にもギリギリ予算内で、銀行の住宅ローンも事前審査でOKが取れました。一部、「ん?」という部分はありましたが(実はここは、ゴミ捨て場があまり整頓されてなかったのですが)、「100%理想通りなんてあり得ない、ここでいいや!」と決意。購入を申し込みました。なのに……。
現金購入のライバルに、買い負けてしまったのです。仕方がありません。賃貸と違って売買は、申し込み順に「一番手」だからと有利なわけではありません。売主側はいくつかの買い手候補から、誰に売るかを決められます。銀行の住宅ローンを使って購入する場合、契約後に銀行の本審査がありますが、そこで万一融資が通らなかったら、契約が白紙解除になる、という特約をつけます。せっかくの契約が取り消しになる可能性のあるローン買いの私よりも、解除にならない現金買いのほうが、売主に好まれたのです。そういうものです。不動産の世界では一番強いのは現金買いですから。
ということで――まだまだ私の煩悩は終わりません。理想の「終の棲家」を求めて、私の旅は続きます。幸い、連載で、都内/地方、買う/借りる、新築/中古という選択肢だけでなく、いまや、さまざまな「住む」サービスがあることが分かりました。還暦を過ぎたからといって、いきなり住居に困り、路頭に迷うリスクは低そうだと分かっただけで、ちょっと安心です。
買うにしても、前に聞いたファイナンシャルプランナーさんのアドバイス通り、資産を取り崩して頭金を積み増し、都内で(万一売る時にも高値で売れるような)中古マンションを買うのか。それとも、手元の資産は老後に備えて運用しておき、予算を下げて、安い中古戸建てを地方で買って移住するか。いやいや、断捨離して、お泊まりサブスクやシェアハウスを活用し、敷礼金を圧縮して月々のフローを抑えるか。はたまた、それらと地方移住を組み合わせるか、組み合わせるなら地方とは二拠点居住か多拠点居住か――「住まい方」のパターンはいろいろ考えられそうです。そして、今ならまだ挑戦できそうです。逆に、還暦前の今しかできないかも、です。