スポーツは、やっている人より観ている人の方が暑い
いやそれにしても、です。
この夏の暑さはちょっとした「試練」のようなものではないだろうか。
大阪大会のときから履正社の選手たちはメンバーとメンバー外でスケジュールが違い、翔大らメンバー外は「偵察隊」として他校チームの試合を観に行くことが多くなった。その日のうちに選手のデータなどをまとめあげ、メンバーに伝えて作戦に活かされる。この頃なんだかとても忙しそうにしていた。
よく言われるのは、スポーツは、やっている人より観ている人の方が暑い、という話。
1日に2試合偵察しなければならない日などは、どんなに気をつけて準備していても暑さにやられて、ひどい頭痛に悩まされていたという。
野球で動いている方が案外平気で、じっと同じ場所に座っている方が何倍も暑いと、翔大は毎晩のように訴えていた。きっと甲子園も試合でグラウンドにいる選手や審判はもちろんだが、アルプススタンドで応援している生徒や観客達も相当暑い思いをして観なければならないのだろう。そろそろ本当に心配。
偵察のない時はメンバーの練習に入ってサポートするので、やはり日中炎天下の野球は休みがない。部屋に帰って水風呂に体を沈め、食欲がないところ無理やり何か口に流し入れて、そのまま寝落ちてしまう毎日。朝になっても頭が痛いと薬を飲んで出かけ、また炎天下で偵察に、練習。
よくここまで元気でやってきたね、となかば感心してしまうほどだ。
朝から飲み物や弁当、氷などをぜんぶ自分で用意して毎日出かけていくのは、ひと苦労だったのではないだろうか。
私もいま次男の野球で、時々酷暑のなか試合や練習でグラウンドを見守るのだが、まず、ジーパンなど履けたものではない。できるだけ薄くて風通しが良くてストレッチのきいたパンツでないと、この暑さと熱に耐えられない。
河川敷に立つ、大きな枝葉を広げた桜の木の木陰は、別世界のようにサワサワと風が通り抜ける。強い太陽の光と熱から手を添えて守ってくれているような、大きな枝葉。でもその葉っぱの先からほんの一歩出るだけで陽炎がゆらゆらと揺らめいて、よどんだ熱気に体ごと包まれてしまう。暑いと言うより、「あぢぃ」
日焼け止めは塗っても塗っても塗っても、なぜか日毎うっすらと肌が浅黒くなっていくのはなぜなのか。化粧なんてドロドロで誰かわからない。もうわかってもらえなくて結構です。
それでもふーふー言いながら、タオルを頭に被せ首にネッククーラーを巻いて、打ったり走ったり飛び込んだりしている子ども達を、今日もゆらゆら、ジィと見つめている…。
「これでも野球、辞めないんだね?」と
誰かに問われ続けているような暑さの夏は、まだまだこの先終わりそうもない。
いま私はこれを、とても涼しい部屋で書いている。
きっと夏の甲子園の改革案を人々が話し合うのは、暑い日中の甲子園のグラウンドではなく、涼しい会議室の中なのだと思う。
いろいろ工夫がされ始めて、試されている。
でも明日誰かに何かが起きたら、明らかにひと昔前とは違うこの暑さをふまえて、105年以上続いている甲子園のあり方を本気で大人たちが変えていく勇気を出すんだろうか。
でもその誰かが、間違っても我が子であってもらっては、絶対に困るんだが。
誰もが皆そう思っているはずだ。